そこにある愛-14
悲しい時は、部屋を真っ暗にして、キャンドルに火を灯し、揺らめく炎を見つめながら今の自分に合った曲をエンドレスリピートさせる。
これがあたしの乗り越え方。
一人暮らしだと、家族の目を気にせず自分の世界に入り込めるのが都合いい。
今の気分は、西野カナでも加藤ミリヤでもない、なぜか長渕剛だった。
でも、長渕剛のCDは元気が持っているから、仕方なくアカペラでボソボソ歌う。
巡恋歌が今のあたしにぴったりだろう。
「好ーきです好ーきです、こっころからあ〜……
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こーんーなに好ーきにさせとーいてー勝手に好きぃになったはないでしょお〜」
自分で何度か歌っているうちに、無性に元気の下手くそな長渕剛のモノマネが見たくなった。
全く似てないのに、長渕になりきって歌う元気の姿は、いつもバカであたしを笑わせていてくれた。
でも、彼はきっともうあたしにモノマネなんて見せてくれない。
それどころか二度と口だってきいてもらえないだろう。
今日浴びせた言葉はそれほど取り返しのつかないひどいもので、今さら前みたいになんて虫のよすぎる話、受け入れてもらえるはずがない。
大事なものって失って初めてわかるっていうけど、あたしは今初めて気付いた。
きっとあたしは元気の優しさに甘え過ぎていたんだ。
絶対失わない、いつもそこにあるものだという確信があったから。
同時に気付く。
あたしはきっと元気のことが……。