そこにある愛-12
「……ホントにいいの?」
俯くあたしの顔を覗き込む誉さん。
あたし、初めての相手があなたなら願ったりかなったりです!
潤んだ瞳を彼に向け、はにかみながら頷くと誉さんは満面の笑みを浮かべて
「やったーー!!」
と少し大きな声を出し、両手を上げて喜んだ。
もう、誉さんって可愛い……。
この先の展開を想像すると、可愛いなんて思う余裕はきっとないけれど、今は無邪気にはしゃぐ彼が愛おしくてたまらなかった。
「おっし、賭けは俺の勝ちだぞ」
誉さんは急に立ち上がって斜め後ろのテーブルに座っていた男の子二人に向かってピースした。
…………賭け?
目をまん丸くして誉さんを見ていると、 男の子二人が彼の元へ歩いて来た。
「ちくしょー、男に免疫なさそうなタイプだから絶対断ると思ってたのに」
金髪に近いくらい明るい色の頭のチャラついた男が残念そうに舌打ちした。
「これが、俺の実力だよ。
約束通り、今日の合コンの会費お前らのおごりな」
誉さんは二人に向けて金を寄越せと言わんばかりに手のひらを差し出していた。
「ちぇっ、会費も取られ、多分一番人気の女の子だってお持ち帰りしちゃうんだろ?
オレらとんだ噛ませ犬だわな」
今度はアシンメトリーの黒い頭をしたビジュアル系気取りの男が、悔しそうに言った。
状況についていけなくて呆然としていると、誉さんが優しい笑顔をこちらに向けて、
「実はさ、今日合コンがあって、その会費を賭けてたんだ。
ナンパして家に連れてくる約束をして、相手からOKもらった奴が勝ちってね」
と言った。
誉さんの言葉に身体が震えてきた。
「コイツらは見事失敗して、最後は俺が勝負に出たんだけど、いやあ茜ちゃんがノリのいい娘でホント良かった!
ありがとうね」
「誉はずりいよ、お前ならあの宮崎あおいみたいな店員さんぐらいのレベルを相手にしねえとフェアじゃねえし」
ビジュアル系がレジ前に立っている宮崎あおいを指差した。
「バッカ、お前らがこの娘行けっつっただろ?
絶対身持ちが堅そうだから、俺を警戒するはずだって」
「最初はそう思ってたんだけどさあ、だんだんこの娘の誉を見る眼がマジ本気になってきたんだもん。
勝負ついたって感じでしらけたわ」
金髪がポリポリ頭を掻きながらつまらなそうに言った。
それを聞いた誉さんが、
「もしかして、本気にしちゃった?」
と、俯きっぱなしのあたしの顔を覗き込んできたけど、泣きそうな顔を見られたくなくてさらに顎をひいて肩を狭めた。