起きてるんだろ?-2
「……おい?いったい何処なんだよっ」
しばらくさまよい続けるも、一向に女の家に辿り着く気配はない。
そもそも酔っぱらいに道案内させることが間違っているのだが、あのまま放っておくわけにもいかず……
「っておいっ!?なに寝てやがんだっ」
あまりに返事が無いので振り向くと、女はいつの間にかすやすやと気持ちよさそうに寝息を立てていた。
俺は大きな溜息をつきながら、しばらくその場に呆然と立ち尽くすも、
放置するわけにもいかず、かと言って捨て猫じゃあるまいし拾った場所に返すわけにもいかず……
「ホント勘弁してくれよ……」
そう呟くと俺は女を背負ったまま、仕方無く自分の家へと足を向けた。
部屋に入って灯りをつけると、とりあえず俺は女をベッドに寝かせた。
女は相変わらず気持ちよさそうに眠ったままだ。
「やれやれ、どうしたもんかねぇ……」
俺は買ってきたビールを飲みながら、ベッドの横に腰をおろしては、じっとその女の顔を眺めていた。
暗がりでよくわからなかったけれど、こうして見ると随分と綺麗な顔立ちをしている。
可愛いと言うよりは美人タイプ。
そのスタイルも相まって随分と男受けしそうな見てくれだ。
(そういや背中の感触からして、胸もかなりのもんだったような……)
思わず目が胸元に向いた。
はだけたブラウスの隙間からは、白い肌と見事な谷間が見え隠れしている。
(……って、何考えてんだ俺はっ!)
両手で頬を叩きながら、必死で理性を取り戻そうとする俺。
女は暑いのか、寝苦しそうにベッドのうえで何度も寝返りを打っていた。
「おいっ そんな暴れたらスーツがシワになっちまうぞ?」
なんとなく俺は女に声を掛けてみた。
けれど、女はぐっすりと眠ったまま、うんうんと無意識に頷くだけ。
(おいおい、明日も会社だろうにどうするつもりだよ)
我ながら余計なお世話だと思う。
そもそも、こんな見ず知らずの女のことなんて気に掛ける義理はない。
けれど、新入社員が家にも帰らずシワシワのスーツで出社ってどうなのよ?
フリーのプログラマなんてしている俺にはわからないけど、あまりいい印象は与えないんじゃないの?
そう思った俺はゆっくりとその場に立ち上がると、女の肩に手をまわし、そっと上着を脱がせはじめた。
女の服を脱がすなんてどれくらいぶりだろうか?
学生の頃はバカばっかりやってたけど、二十歳越えてからはてんで女っ気が無くなったな。
そんなことを思いながら上着を脱がし終えると、とりあえずハンガーに袖を通して壁に掛ける俺。
女は両手を豪快に広げたまま、けれど両足は綺麗に揃えて眠っている。
(器用な女だな…… もっとガバッと広げてくれねぇかな?)
溜息ひとつ、気がつくと俺はまたよこしまな妄想を肴にビールをもう一缶空けていた。