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警鐘
【その他 官能小説】

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ホワイトアウト-4

 夏目由美子は私の目の前で自慰行為をはじめた。

「私はいつも里緒のことを考えながら、こんなことばかりしていたんだよ……」

 指がなめらかにうごめいて、女性器のあちこちの肉をさすり、かき混ぜ、七色の声で喘ぐ。
 指の隙間で糸を引く愛汁の始末もそのままに、気持ちの高ぶりを声に変えて行為を急ぐ。

「あくん……うくん……」

 三本の指が彼女の壺を掘り返している。もっと遊びたいと駄々をこねているのだろう。遊び相手は私というわけになる。

「里緒にもっと見られたい。入れて欲しいの……」

 私が受け皿になり、その上で彼女が愛液を飛び散らせている。
 私もオナニーがしたいと思いはじめていた。けれども体の自由が奪われていて、自分の口から言い出すこともできず、ただ悶々とやり過ごすしかなかった。

「我慢できなくて、里緒はお漏らししちゃったんだね」

 私の陰部を見て彼女が言った。そして体の前後を入れ替える。
 二人の向きがシックスナインへ移り、磁場をつくって引き寄せ合う。波形に歪んだ陰唇が目の前にあった。
 これを舐めたらどんな味がするのか、そんなことを考えていたときだった。

 くちゅっ──と音がした。

 途端に体の芯が震えて、快感が一気に全身を駆け巡る。彼女は私の陰唇に接吻していた。

「だめ……んああっ……」

 想像以上の快感だった。脱力と緊張が連続しておそってくる。
 彼女の舌が伸びて、クリトリスをちょこんと突く。

「ひいっ……」

 あられもなく反応してしまう私。クンニリングスだけでもう十分に気持ちが満たされていた。

「里緒のここ、いやらしい蜜がいっぱい出てる。感じてくれてるんだね」

 猫撫で声で甘える夏目由美子。彼女のヴァギナからも透明な液が溢れている。舐めてあげたい。

「由美子……」と私は囁いた。

「私にもちょうだい。この手錠を外して欲しい」

 すると彼女は口淫を止めて、こっち向きに女の子座りをした。その口が生々しく濡れている。

「私はあなたに酷いことをした。内緒でつきまとったり、里緒の体が目的で交流サイトに誘ったり、こんなふうに手錠でつないだり。それでも……、こんな私でも抱いてくれるの?」

「私、あなたのことを誤解してた。いつも綺麗で明るくて、性生活にも不満なんかないんだって思ってた。でもさっきの由美子の話を聞いて思った。私とおなじだなって」

「おなじ?」

「うん。出産のあとぐらいから旦那にも相手にされなくなって、私はずっとセックスレスだった。出産に立ち会わせたのがあまり良くなかったみたい」

「そうだったんだ。結婚と出産と子育て、それが女の悦びなんだって勘違いされてるんだよね、私たち。ほんとうに満たされたいのはセックスの部分なのに、誰もわかってくれない。だから女性の人格を無視して、痴漢とかレイプみたいなことが平気でできるんだよ。私もあんなことがなかったら、もっと普通に男の人を愛せたのに……」

 彼女の表情がふたたび沈んでいく。

「由美子の傷、私が癒やしてあげるから。私が愛してあげるから」

 閉ざされた空間に、照明を浴びた二つの裸体が白く浮かび上がっている。拘束から解かれた私の手が、夏目由美子の肩をぐっと引き寄せる。

「由美子……」

「里緒……」

 それぞれの肉体を惜しみなくさらけ出し、どちらからともなく唇にむさぼりついた。
 甘い菓子が口の中で溶けるような、儚い味覚が広がった。髪の毛束を揉み合い、鼻先が曲がるほど顔を押しつけて、舌と舌を絡ませるたびに愛しさが込み上げる。
 私は彼女を愛していた。

 昼か夜かもわからない密室で交わる女二人。
 そんな私たちの知らないあいだに、世界中のどんな場所にも平等にクリスマスが近づき、街は赤や緑のクリスマスカラーの電飾で彩られていくのだろう。
 それはやがてワイルドガーデンズとスクエアガーデンズにもやって来て、ジングルベルを聴かせてくれるに違いない。


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