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警鐘
【その他 官能小説】

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一の交流-3

 その翌日のこと。

「それでどうだった?」

 ファミリーレストランで日替わりランチのドリンクを飲んでいた夏目由美子が、歯形のついたストローをからからとまわしながら、私の顔をのぞき込んで言った。

「ブログがいっぱいあって、ずっと読んでいても飽きないね。ゲームもやっちゃった」

「なんか、ここんとこ主婦の会員が増えてるんだって。それはね」と言った彼女の声が小さくなる。

「疑似恋愛みたいなことができるからだって」

 彼女は小悪魔のように笑った。その言葉の意味が私にはまだわからなかった。
 それでもどうにかサイトの使い方にも慣れてきて、私は自分のブログページを立ち上げ、更新しては閲覧数をチェックするのが日課になりつつあった。

 サイト内での私のハンドルネームは、『オリオン』で登録している。もちろん、ちゃんとした理由もある。
 天体観測が好きだった幼少の頃、母親と二人して夜空を見上げながら、冬の大三角形の点と線を結んで遊んでいた。
 一等星がひときわ目立つオリオン座と出会ったのは、そのときだった。

あの星からもこっちが見えているとしたら、地球は何座になるのだろう──。

 子どもながらにそんなことを考えていたのを今でも覚えている。それに、オリオン座の名前に里緒の名前が入っているのよ、と母親が教えてくれた。

 オリオンのブログを立ち上げて間もなく、予想以上の反響があったことで、オリオンの存在は瞬く間にサイト内で噂になった。
 女性ユーザーからのコメントがそのほとんどを占めてはいるものの、男性ユーザーからの声もちらほらと書き込まれるようになり、私は嬉しくなった。
 自分が異性として見られていると思うと、女性ホルモンが騒ぐような錯覚をおぼえた。
 おそらく彼らは私に振り向いて欲しくて、必死になって話しかけてくるのだろう。

 そんな中でも特にマメな人がいた。ファーストコンタクトこそ素っ気ない挨拶だけで、まったく印象に残らない人だった。
 けれども何度か会話を重ねていくうちに、彼の紳士的な態度に好感を抱くようになり、私たちは徐々に打ち解けた。
 それがノブナガさんだった。

 いつか夏目由美子が言っていた台詞を思い出し、私は納得した。これが疑似恋愛だとしたら、私はもうその手中に取り込まれているのかもしれない。
 相手のことを考えただけで、体の芯が疼いてしまう。大人の恋愛とはそういうものだから。

 そしてノブナガさんに限らず、男性からのコメントには捨てどころがないことも知った。
 下心を隠すために猫を被って接触してくる人。あからさまにナンパ目的で近寄ってくる人。
 そんな彼らの一字一句が、普通の主婦である私に向けられていると思うと、素直に興奮した。
 なぜなら、猫を被っているのは彼らではなく、私自身なのだから。


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