一の交流-2
「ねえ。三月さんはもう知ってる?」
夏目由美子(なつめゆみこ)というママ友が、持ってきた回覧板もそっちのけの様子で、いきなり私に切りだした。
「なんか、タレントやアーティストのブログが読めるサイトがあってね。それでなんか、知らない相手と話もできたりして、可愛いゲームもできるよ」
玄関先の彼女は目を輝かせている。話すときに「なんか」をつけるのが彼女の口癖らしい。
夏目由美子の話によると、会員制の交流サイトというのがずいぶん流行っているらしく、ターゲットは十代から二十代の男女で、最近では主婦のユーザーも増えてきていると言う。
それに、自分専用のブログページも作成できるようで、そのあたりをとても熱心に説明してくれた。
彼女の話を最後まで聞いてみれば、友達紹介をした会員には特典がつくそうで、どうやらそれが目的のようだと私は思った。
「なんか、全部無料で遊べるし、三月さんも興味があればどうかと思って。ほら、私も登録してるし」
「へえ、そんなの流行ってるなんて知らなかった。芸能人のブログなんて読んだことないし、面白そうね」
「でしょう?それじゃあ、あとで三月さんにサイトの紹介メールを送っておくから」
そこでようやく思い出したように回覧板を私に手渡すと、スーパーに買い物に行くと言って彼女は帰った。
その日の午後、さっそく夏目由美子からメールが来た。開封すると、サイトのアドレスらしきものの下に、『絶対ハマるから』というメッセージとハートの絵文字があった。
私も負けじと、『ありがとね』というメッセージにたくさんのハートをつけて返信した。
彼女から貰ったラブレターを眺めたあと、たったワンクリックで誰かとつながれることに胸を躍らせて、私はそのサイトにアクセスしてみた。