狙われた女警-1
ジリジリと陽が射す中、菊田由美巡査は路上駐車をキビキビと取り締まっていた。
中に一台何度も通報を受けているベンツが止まっている。
「由美。このベンツずーっとあそこに止まって邪魔なのよね。でもなんかヤバイ人乗ってる車だったりして。」
同僚の川辺優子巡査が囁く。
「だからなんだっての。邪魔な物は早くどかさないと。通行の邪魔よ。」
「そうよね。レッカーしようか。」
早くベンツを処理しようをレッカーを呼ぼうとしたその時何人かいかにもガラの悪そうな男達がビルから出て来てベンツに乗ろうとする由美が呼び止める。
「ちょっと。このベンツの持ち主さん達ですか。とても通行の邪魔なんですけど。違反切符切らせて頂きます。」
そう話しかけると一人の丸坊主の男が逆上して由美の顔に自分の顔をぶつける様にガンをとばす。
「ああ。だからなんだ。婦警のおねえチャン達よ。ここは俺らの縄張りなんだよ。」
その他の男達4人で二人を取り囲む。
優子は内心エライ事になったと思ったが由美は負けじとひるまず立っている。
「まあ。待てよ。」
何者かが声を掛けると男達が脇に避けるとすらっとした35歳位の背の高い男がベンツから出て来て二人の前に来ると由美を顔からつま先まで上下に観察をしてるようだ。
「なかなか良い度胸してるじゃないか。気に入ったぜ。どうだ俺の女にならないか。良い暮らしさせてやるぜ。」
「はあ。馬鹿じゃないの。冗談じゃないわ。」
由美は余りの言い草に思わず声を荒げる。
「あんた達良くこの辺駐禁してるだろ。良く上のオフィスから見かけるぜ。中々好みの2人だと思ってたんだ。特にアンタはな。名前は。」
「言う必要ないわ。」
由美はプイっと横を向くとその瞬間不意に右胸を揉まれる。
「いやっ」
そう叫びながら思わず男の右頬を強く引っ叩く。
男はそれさえも嬉しそうな表情を浮かべたので由美を気持ち悪くて仕方が無かった。
「良い挨拶だ。益々気に入ったぜ。ほらついでに違反切符を書いてやろう。」
そう言って側で立ちすくんでいる優子から切符を奪う様に取りサインをすると自分の名刺も挟んで来た。
「じゃあな。今度会う時はベットの上でな。俺の名前は柴田豊って言うんだ覚えときな。」
そう由美に言い放つと大きな笑い声でベンツにのって言ってしまった。
「由美。変なのに目を着けられかな。」
「はら。行くよ。」
優子が話し終わるかどうか関係なく最悪に不機嫌な気分でパトカーに乗り込み次の現場に向う。
それからしたある日の事、柴田達はある若い華奢な大学生を屈強な男達が取り囲んでいた。
「すいません。許して下さい。わざとじゃないんです。」
「当たり前だ。人のベンツにぶつけておいて。こんな事わざとじゃ困るんだよ。どう、落とし前をつけてくれるんだ。」
大学生の襟首を掴みあげる。
「まあ。しょうがねえや。このお兄ちゃんの両親にでも脅しを賭けてみるか。」
柴田が冷たい目で大学生を睨みつける。
「あの。うちの姉が警察官なんでそれだけは勘弁して下さい。」
「なんだと。そうか。」
「社長。どうします。」
「まあ。いいや。とりあえず事務所に連れて行って見よう。後はそれからだな。」
「ほら。来るんだよ。」
「あの。命だけは助けてください。」
泣き叫ぶ大学生は何処かえ連れさらわれてしまった。