第六話(行為なし)-1
香澄さんを部屋に待機させ、僕は母親と向かい合って座っていた。
彼女が(元)アイドルであることや動画、盗撮の話をぶちまける。
「というわけで、今夜泊めてもよろしいでしょうか?」
普段は母親に敬語なんて使わないが、自然と敬語になってお願いしている僕であった。
「まぁ、盗撮されてる部屋には帰りたくないでしょうし、泊めるぐらいならいいけど」
「よっしゃ!」
「ただ、ああいうことは場所を選んでしなさい」
ああいうこと=セックスのことですはい。
「年頃だしするなとは言わないけど、もちろん避妊具はつけてるんでしょ?」
「もももももももち、もももちろん!」
「目を合わせて言いなさい」
「つけてませんっ!」
素直に白状した。
「あんた…どういうことかわかってんの?」
「………」
「子どもでもできたらどうするつもり?」
「そ、育てる!」
「簡単に言うんじゃないわよ。そもそもお金はどうするの?あんたに養えるの?」
「そ、それは高校やめて、就職すれば…」
「高校中退って中卒ってことよ?そんなんでいい仕事見つけられると思ってるわけ?」
「そ、それは…」
「それに向こうの親御さんにはなんて言うつもりよ?桃園さんがあんたと一緒になりたいって思ってても、向こうの親が許してくれるわけないじゃない」
「………」
「はぁ、彼女ができたと思ったらこれだもん」
***
「竜、大丈夫だった?」
「…………」
「そんなわけないか…すまない」
ベッドに腰かけると、香澄さんが隣に座ってきた。
「ところで竜、これはなんだ?」
「え…」
香澄さんが聞いてきた物。
押し入れに閉まっていたはずのそれは、ティッシュボックスよりやや大きめの箱で、前面に可愛らしい女の子が描かれているブツだった。
「ここに『18歳未満お断り』と書いてあるんだが、竜はいくつだったかな?」
「はははやだなぁなにか勘違いしていません?それは別にやましい物ではないんですよはっはっはっー」
「『陵辱や寝取られ一切ありません』と書いてあるが、わざわざこんなことが書いてあるのはなぜだ?」
「なんででしょーねー」