第六話(行為なし)-4
「僕、どうすればいいんですかね…」
昼休み、無人の教室で佐伯先輩に相談する。
もちろん香澄さんのことについて。
「香澄は昔から依存する傾向にあったからねー」
「今の香澄さんは、正直見ていられません…」
「どうにかできるの?」
「するしかないじゃないですか…」
甘えてほしいとは思っていたけど、今の香澄さんは佐伯先輩の言うとおり僕に依存しているだけだ。
このままだと香澄さんこそ高校を中退して、僕に依存した自堕落な生活を送り続けることになりかねない。
「大人に任せておけばいいんじゃない?」
「そんなの、やるせないですよ…」
僕に依存しているのは、僕が彼女を甘えさせてしまったからなのだ。
他人にばかり頼ってはいられない。
「別れることも、考えたんですが…」
「それはしないほうがいいね。香澄がなにするかわからないよ?」
「自殺するって言ってました…」
「だろうね」
なんとかして香澄さんを元の香澄さんに戻してあげたい。
けど香澄さんに別れを告げ、独りになってもらうことで立ち直ってもらうしかない…そんな考えしか浮かんでこない。
仮にそれを実行して香澄さんが自殺しなかったとしても、また付き合えるという保証はないし、万が一付き合えてもまた依存されかねない。
「……佐伯先輩」
「なに?」
「僕、やっぱり香澄さんと……」
「飽きちゃった?」
「茶化さないでくださいよ」
「ごめんごめん。それで?」
「香澄さんのこと、お願いしてもいいですか…?」
***
「おかえり!」
家に帰ると香澄さんが勢いよく階段を駆け下り、僕に飛びついてきた。
まだ裸のままだったらどうしようかと思ったが、セーラー服(それしか持ってきていない)を着てくれていた。
「寂しかったぞ、竜…」
キスしようとしてくるその唇を手で制する。
「竜…?」
「香澄さん…僕たち、距離を置きませんか…?」
「え…な、なに言ってるんだよ…」
「香澄さんは自暴自棄になって、より所がないから僕に依存しているだけです」
そう言うと香澄さんは僕から離れた。
「元の香澄さんに戻ってください」
「戻るも何も、私は変わっていない…」