第五話(行為あり/本番あり)-5
「ただいまー」
そう、このように親が…………え?
「んちゅ、ぐちゅ、れろ…ぐちゅ、ぬちゅ…」
今なにかすごく嫌な声を聞いた気がするんですけどぉぉぉ!?
しかも香澄さんは気付いていないらしく、唇を離そうともしいない。
「んちゅ、れちゅ、ぬちゅ…」
今の現状を確認しておこう。
対面座位で繋がった状態。僕は下半身露出。香澄さんはセーラー服着用、下着はそこらへんに投げ捨てられている。激しいディープキス。
こんなところ親に見られたら絶望するしかねぇぇぇ!?
「ぬちゅ、れちゅ、んちゅ…」
未だ唇を離してくれない香澄さん。
そして無慈悲にも開け放たれる居間の扉の音。
僕からはちょうど見えないが、帰ってきたのは母親のはず。
「んちゅ…れ…?」
香澄さんは僕と唇を触れあわせたまま動きを止めた。
「あ、ま、間違えましたー!」
母親の声はそう言ってドタドタと玄関のほうへ戻っていった。
「あの人、家間違えたみたい」
「違うって」
アパートやマンションならともかく、一軒家で家を間違えることなんてそうそうない。外見が同じ家が隣に並んでいれば別だが。
「あれは僕の母親」
声も時間帯もちょうどあっている。間違いない。
「……は、は、お、や…?……え?え?」
「ですからそろそろどいてもらえませんか」
「う、うん。んっ…」
繋がりを解き、香澄さんは僕の足元にちょこんと座った。
「どうしよっか…」
「戻ってくる前に片付けちゃいましょう」
すぐに戻ってこないところを見ると、恐らく今頃表で時間が経つのを待っているはず。
「竜のお母さんに、恥ずかしいところ見られちゃったな…」
もうこうなったらなるようにしかならない。はは…。