第四話(行為なし)-1
4月26日、深夜2時。
「…………」
プレゼント渡しそびれたな、なんて思いながら寄り添って眠る彼女の頭を撫でる。
「ん、う…竜…?」
「ごめんなさい、目ぇ覚めちゃいました?」
「ん…謝るぐらいならちゅーしろ」
可愛いことを言われたので、軽くキスをして見つめあい、微笑みあう。
「君と同じベッドで、こうして裸で眠る日がくるとはな…」
「そういえば今さらなんですけど、香澄さんは僕のどこに惚れたんですか?」
「…初めて会った日のこと、覚えているか?」
「もちろん」
忘れるわけもない。僕の初恋(現実)で、初告白(全校生徒の前で)だったのだから。
「君はあの時、私にこう言ってくれたな。
『努力すれば必ず報われる日がくる!』と」
「え?」
そんなこと言ったっけ?
恋は盲目というが、もしかして記憶を捏造されちゃってますか?
「君は、私のファン第一号だったな…」
やっべー何言ってるのかまったくわからん。
でも忘れてるなんて知られたら怒られそうだし、上手く話を合わせておこう。うん。
「あれ?でも君、私のことアイドルだと気付いてなかったはずじゃ…」
何も言ってないのに気付かれたー!?
「確認しておきたいのだが、私と君が初めて会ったのはいつだ?」
「えっと…」
入学式。まだ一ヶ月も経っていないんだ。忘れるはずもない。
しかしこの答えでいいのか!?ファン第一号とか言っていたが、僕は香澄さんというアイドルの存在すら知らなかった。
香澄さんの記憶と食い違っているような…。
「入学式…?」
結局そう答える。
「そう。中学のな。なんだ覚えているじゃないか」
え、中学…?ごめんなさい全然覚えてません。
でも中学の入学式、つまり一年生と言ったら僕が一番オタクとして盛んだった時期じゃなかったか。
仮に当時香澄さんと出会っていたとしても、現実に興味がなくて今の今まで忘れていた…ありそう。
「『僕が君のファン第一号になる!だから頑張ってトップを目指せ!』
生意気なことを言うやつだと思ったよ」
そりゃ中一にそんなこと言われりゃあな。
「だから高校の入学式の時、あんな場で君に告白されて驚いたよ」