第二話(行為あり/本番なし)-7
「え…では、桃園さんで…」
「他人行儀だ。却下」
「ハニー…?」
「バカップルみたいでイヤだ。却下」
「え、と…じゃあ、香澄さん、で…」
「妥当だな。ときに竜一郎」
「はい?」
「竜一郎は少々長いのだが…」
言われて僕は元気をなくした我がムスコを見る。
長いの、か…?
「おちんちんのことではない。名前の話だ」
「わ、わかってますよ…」
「まったく。それで、竜一郎だと長いので『竜』と呼んでもいいか?」
「竜…なんかかっこいいですね!」
竜、それ即ちドラゴン。男の、いやオタクのロマンを感じる。
っていかん。僕はオタクを卒業したんだった。
「竜、もう精液はついてないかな?」
さっきまで精液まみれだった先輩の顔を改めて見てみると、綺麗さっぱりなくなっていた。あとは顔を水で洗えば完璧だろう。
「えぇ、まぁ…けど…」
見た目はよくても、精液独特のニオイはそう簡単には消せない。まだ午後の授業があるというのに。
「わかってる。何も言うな」
僕は先輩の顔を見つめた。
「どうした?」
僕だけ満足して終わるわけにはいかない。先輩にも気持ちよくなってほしい。
「先輩のこと、気持ちよくしてあげたいです」
「わ、私は君が満足してくれたならそれでいいんだ」
「先輩がよくても、僕はよくないんですよ」
「き、気持ちは嬉しいが、今はダメなんだ!」
「…まだ、僕にはしてほしくないんですか…?」
「じゃ、なくて…お、おしっこ…我慢してるから…」
「おしっ…!」
合点がいった。
さっきモジモジさせてたのは、気持ちよくなりたいからとかではなくて、いやそれもあるだろうけど。とにかくそれだけではなくて、尿意を催していたからなのか。
「言っておきますけど、僕にスカトロ趣味はありませんよ?」
「誰も聞いてないだろう!?『そんなこと』を頼むつもりもない!」
まぁスカトロ趣味はないが、女子がおしっこする姿って見たことないから、一度でいいので見ておきたい。
「もう時間もありませんし、ご飯食べちゃいましょうか、先輩」
「……名前で呼んでくれ。さっきも『先輩』だった」
ふて腐れてしまった。
うーん。すっかり忘れてた。