第一話(行為なし)-5
「なるほど。だから可愛いんですね」
「そうなる」
肯定されちゃった。
さりげなく『可愛い』と言ってドキッとさせるつもりだったのに。
「それじゃあな、大谷。また今度」
今度…だと?
「昼休みに会いに行きますんで!」
***
「というわけで会いにきました!」
「君は一週間休んだのだぞ?クラスに馴染んでおかないとマズイんじゃないのか?」
「ふっ…先輩と付き合ってることに比べれば、クラスの奴らなどただの雑草ですよ」
「付き合ってないから」
『さりげない恋人アピールでドキドキ作戦』は失敗に終わった。
「それと君にとってここは上級生の教室だぞ?何も思わないのか?」
「やっぱモモ先輩が一番ですね!」
「そういうことを言いたいんじゃないんだが」
都合よく空いてる机なんてなかったので、立って食べることにした。
立ち食い蕎麦屋なんかがあるぐらいだし、立ち食いしても問題ないはず。
「いいなー香澄。こんな可愛い一年生に言い寄られてさー」
「欲しければくれてやるぞ」
「マジで!?ねぇキミ、香澄なんて諦めて、私と大人の階段をのぼっ「遠慮します」
勝手に話を進められていたので、言葉を遮って断った。
「僕はモモ先輩にしか興味ありません」
「女として悔しいっ!」
モモ先輩以外のリアル女なんてただのボロ雑巾にすぎない。
「ところでモモ先輩の友達さん」
「佐伯」
「佐伯先輩。どうすればモモ先輩をドキドキさせれますかね?」
「簡単よ。ごにょごにょ」
「ほうほうなるほど…ってわかりませんよごにょごにょじゃ!?」
漫画とかではよくあるけども!かくかくしかじかと同じでリアルじゃ使えないだろ!
「そんなに知りたい?」
「知りたいです」
「じゃあ私と付き合ってみない?」
「本末転倒だろぉぉぉ!?」
モモ先輩をドキドキさせるために佐伯先輩と付き合ってどうする!
ところで佐伯って妙にエロチックな名字だよね。テニス部だよきっと。『ファルト』的な意味で。
「私をドキドキさせたいなら、ノーヒントで頑張れ」
「はい先輩!僕頑張ります!」