第一話(行為なし)-4
「ときに大谷。君は私のどこが好きになったんだ?」
「顔です」
「……正直なやつだな」
「あと髪の毛。綺麗ですし」
「褒められて悪い気はしない。ありがとう」
「あと腰の形。すごくいいですよね」
「…………」
「それから胸の膨らみ。直接見ないとなんとも言えませんが、大きすぎず小さすぎない、見事な大きさですよね」
「…………」
「あと「もういい何も言うな」
まだ言い足りないのに、先輩に言葉を遮られてしまった。
セーラー服が似合うとか、黒のストッキングが素敵とか、まだまだあったんだけどな……。
「そろそろ学校に着く。君は離れていろ」
「え?はぁ…」
よくわからないが先輩から距離をとり、しばらく無言で歩く。
「かすみ〜ん!」「好きだー!」「罵倒してくれー!」
校門の所に、奇妙な人だかりができていた。
そしてなぜか、皆がこちら…というか先輩に向かって手を振っていたり、好意的な言葉を投げかけたりしている。
「かすみん…?」
気になってスマフォで検索をかけると、最近話題のアイドルがヒットした。
桃園香澄(ももぞのかすみ)は2010年から活動している日本の現役でアイドルである。
ファンからは『かすみん』の愛称で親しまれている。
Sっ気を売りにしているためかファンはMばかりという噂も……。
本名は芸名と同じで、1996年4月26日生まれ。A型。
「……えぇぇぇ!?」
ちょっ、これモモ先輩のことじゃないっすか!?
現役アイドル?なんじゃそりゃぁぁぁ!?
ってことは何か?僕は全校生徒の前でアイドルに告白したの?死にてー!
「私のファンでいてくれてありがとう。だが迷惑だ。学校にまで押しかけないでくれ」
「やったぜー!」「ありがとうございましたー!」「もっと罵倒してー!」
……変態だ。こいつら変態だ。
「先輩ってアイドルだったんですね」
昇降口に入ったところで、先輩に話しかける。
「うん?なんだ。知っていて告白したんじゃないのか?」
「アイドルに興味なくて」
そもそもアイドルが同じ学校に通ってるなんて思わないし。しかも生徒会長だなんて考えもしなかった。