第一話(行為なし)-3
付き合うまでは、だって?
僕は誰かと付き合ったことはないけど、恋愛ってそんなものなの?
「だから大谷。もしも私のことが諦めきれないというのなら、私をドキドキさせてみろ。そうしたら恋人にでもなんでもなってやる」
・・・・
なんでも…だと!?
メイドにも、看護婦にも、ミニスカポリスにもなってくれるだとぉぉぉ!?
「受けて立ちます生徒会長!では問題!キドキドを反対から読むと?」
「きどきど…どきどき」
「よっしゃぁぁぁぁぁ!」
「……嬉しいか?」
「ぜっんぜん嬉しくありません!」
むしろ虚しくなった。
『ドキドキさせろ』って、別に言葉に出させろってわけじゃないよなぁ…。
「では遅れるといけないので、そろそろ行く。君はどうする?」
どうするって?考えるまでもない。
「一緒にイキます!」
***
「おし、香澄。一緒に行ってやるよ」
「なぜ上から目線なんだ。しかも先輩を呼び捨てにするな」
怒られてしまった。
どうやら『下の名前を呼ばれてドキドキ作戦』は失敗のようだ。
「香澄さんは処女ですか?」
「いきなり突っ込んだ質問をするんだな、君は」
「え?ツッコんだ?」
「下の名前で呼ぶな。友達でもないのに」
「わかりました。モモ先輩」
『テニフリ』とか『まじどすこい!』にそう呼ばれてるキャラがいたな……っていかん。僕はオタクを卒業したんだった。
「で、処女なんですか?」
「ノーコメント。今回は見逃すが、今度あまり突っ込んだ質問をしたら、嫌いになるからな」
「なん…だと」
アスファルトの地面に手をつき、orzとがっくり膝をつく。
「そんなに落ち込むな。大袈裟だぞ」
「大袈裟なんかじゃないです!モモ先輩に嫌われたら死んでしまいます!」
「死にたいなら死ねばいい。不登校のガキになら世話も焼くが、自殺志願者は知ったことじゃない」
「ガキ…」
「ああ。言っておくが君のことだぞ、大谷」
「…………」
悔しいけど、たしかに僕はガキだったかも。いや、今もガキか。
「飛べないガキは、ただのガキですよね…」
「日本語で頼む」
馬鹿な!?『暮れないのは豚』の名台詞のパロディが伝わらないだと!?