第一話(行為なし)-2
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あれから一週間。僕はあの日以来、一度も学校に行っていない。
もし生徒会長に会ってしまったら、どんな顔をすればいいのかわからない。
しかもよりにもよって僕は全校生徒の前で告白をしたのだ。名前は…そういえば名乗っていないからわからないが、顔を覚えられてしまったに違いない。
来年にはあの生徒会長はいないはずだし、一年も経てばさすがに僕のことなんて忘れるはずだ。
だからこのまま不登校を続けて留年してしまおう――そう思っていた時だった。
「大谷竜一郎!お前は既に包囲されている!」
窓の外からそんな叫び声が聞こえてきた。
「おとなしく人質を解放し、我々に投降しなさい」
近所迷惑だろこのDQNが!一体どこの馬鹿の仕業だよ!
「…………」
息を飲む。
窓の外で叫んでいたのは、なんと生徒会長だった。
「迎えに来た。学校へ行くぞ」
「は、はぁっ!?」
突然何を言い出すんだあの生徒会長は。
公開羞恥プレイをさせておいて(自業自得だけども)、迎えに来た?学校に行こう?アホかぁぁい!?
「高校生活を楽しめ。私はそう言ったはずだ」
「楽しめるわけないじゃないですか!?僕をフっておいて馬鹿なことを言わないでください!」
「君が告白してきたから返事をしたまで。私に非はない」
それはすごくもっともだ!
全校生徒の前で告白したのは完全に僕のミス。生徒会長はいわば被害者だ。
「大谷竜一郎。人様に迷惑をかけるな。そうも言ったはずだ」
「か、かけてませんよ!」
「かけているだろう。家族、教師、クラスメート……それに私にも」
返す言葉もございません。
「大谷竜一郎。君はどんな恋愛がしたいんだ?」
突然の質問。
どんなって聞かれても、そんなこと考えたこともない。
「私はな、ドキドキする恋愛がしたいんだ」
「れ、恋愛って、ドキドキするものなんじゃないんですか…?」
二次元でそう学んできた。
「ああ。私もそう思っていたよ。だから中学生の時、初めて彼氏ができて愕然としたものだ」
生徒会長、彼氏がいたのか……。
「全然ドキドキしなかった。だからそいつとは別れたよ」
「ドキドキしないって……好きだから付き合ったんじゃないんですか!?」
「ああ。好きだったさ。付き合うまではたしかに、な」