交尾タイム-2
龍はベッドの上で飛び起きた。はあはあと大きく荒い呼吸を繰り返し、全身が汗にまみれていた。鼓動も、暗い部屋中に響き渡るかと思われるほどに大きく、速かった。
「ゆ、夢・・・・。」
春の足音がもうそこまで来ている2月終わりの夜のことだった。
海棠 龍は現在高校一年生、16歳。彼のいとこのシンプソン・真雪は昨年12月に20歳になったばかりで、この3月には動物飼育の専門学校を卒業する。
龍と真雪は三年前の夏から恋人同士になっていた。当時高三だった真雪が龍に告白したのが始まりだった。龍も幼い頃から自分をかわいがってくれていた真雪に、思春期になって少なからぬ恋心を抱き始めていたこともあり、二人の交際はきわめて順調にスタートした。真雪が告白して数日後には、二人は身体を重ね合い、深い仲になった。以後、彼らはずっと熱く、甘い関係を続けていた。
しかし、思いがけない事件が突然起きた。
昨年12月初めに実施された専門学校の重要なカリキュラムの一つ、水族館での宿泊実習で、真雪は実習生たちの世話をする研修主任の板東という男に誘惑され、夜を共にしてしまったのだ。
その事件は真雪と龍の心に深い傷を残した。実習から帰った夜、半狂乱になりながら自分のやったことを悔やみ、犯した罪を龍に謝り続けた真雪。その姿を見るに堪えず、胸を引き裂かれるような苦痛に苛まれながらも必死で真雪を赦し、包みこんだ龍。
それから今まで、二人は何度も抱き合い、激しく愛し合って、その忌まわしい出来事を忘れるための努力を強いられたのだった。
「いやだな・・・。なんで今になってこんな夢、みるかな・・・。」
鼓動が収まった龍はベッドで身体を起こしたままうつむき、一人呟いた。
窓の外から小鳥の声がかすかに聞こえてきた。
仰向けになった彼は、それから眠ることができずに、しらじらと明け始めた朝の冷たく白い光が染め始めた天井を、じっと見つめていた。