鳴海の大魔神-3
「ええ、なんだかずっと会ってなかったみたい。そんな感覚です……。会えて嬉しい……」
「さーちゃん、なんだか元気ないように見えてしまった……。私の錯覚なのかなあ?」
「あおいさん、実は……」
「どうしたの?」
「紗綾ちゃん」
関谷は声を潜めて、呼び掛けてきた。
「はい」
「せっかくあおいちゃんに会えたんだし、俺にも会えた。ここは隠し事なしでいこうじゃないか。まあ、なんというか…俺のカンだが、新田勝雅に乱暴されたのか?」
紗綾はコクリと頷いた。
「強姦されたのか?」
「いえ…そうじゃありません……」
「合意の上のことか?」
「仕方なかったんです」
「仕方なかった?」
「お母さんも美和さんも、味方してくれなかった……。わたしはどうしようもなかった……」
塞き止めていた感情が胸からどっと溢れてきた。紗綾はあおいの胸に顔を埋めて泣いた。
どのくらい泣いたのだろうか――。あおいの胸から、顔を離して、前を向くと、関谷がたらこスパを美味そうに頬張っているところだった。
「なんだかある歌を思い出しちまった」
口をモグモグさせながら関谷は言った。
「えっ?」
「僕は〜♪ 君の自転車のうしろで〜♪ 孤立無援の聖書を読んだ〜♪」
「その歌は誰の歌?」
あおいがすかさずツッコミを入れる。
「森田童子の孤立無援の唄」
「知らな〜い。『ぼくたちの失敗』なら知ってるよ」
「それは超有名だからな」
窓の外から悲鳴が聞こえてきた。叫び声もする。いったい何が起こったのか?