鳴海の大魔神-2
セダン車の後部に乗ると、あおいは紗綾に寄り添うように、隣に乗ってきてくれた。
「駅前のファミレス・ソワレだったら、まだやってるよ。そこいこうか?」
「ええ、お願いします」
「発車オーライ」
運転席から聞こえた声。この声は――。
「お嬢さん、こんな時間に外出して、新田組長に叱られないか」
「えっ! もしかして!」
「夕方、緑地公園で会ったばかりだな」
「関谷さん!」
「さーちゃん、たっちゃんと知り合いだったの」
あおいは驚きの声を上げた。
23時24分。
紗綾は新田勝雅のケータイに掛けた。
「紗綾です。今、バイト仲間の香坂あおいさんと一緒にいます」
「えっ!」
「車中です。車を運転しているのは関谷刑事です」
「なっ、なんだって、関谷も一緒なのか!」
「喫茶店で話したら、家に戻ります」
「なっ、何を話すんだ!」
紗綾は通話をOFFにして、そして電源を落とした。
鳴海駅前のファミレス・ソワレは午前1時まで営業していた。午前0時に近い時間だけに、お客の入りは疎らであった。
三人はボックス席に陣取った。紗綾の前には革ジャン姿の関谷が座り、紗綾の横には香坂あおい。紗綾とあおいはソフトドリンク、関谷はたらこスパゲッティを頼んだ。
「たっちゃん、こんな時間に食べると太るよ。知らないから〜」
「心配ご無用、俺は元から太らない体質なんだよ」
「そうかなあ?」
「夕方から9時まで家でうとうとしてしまった。からだがなまったから、筋トレしてたら、腹減っちゃってな」
関谷達弘はハニカミの表情になった。
(あおいさんの彼氏が関谷刑事だったなんて……。うーん、彼氏なんだろうか?)
「さーちゃんが3月末にバイト辞めて以来やから、ふた月ぶりか…。なんかもっと久しぶりみたいやね」