モトカレシ-1
「ひどい顔……」
朝起きて、自分の顔の醜さにため息が出た。
それもそのはずか。ろくにご飯も食べないで、暇さえあれば泣いてばかりいるから、瞳は腫れぼったくなって、頬はこけてしまって。
あと3キロが減らなくて苦戦していたダイエットも、皮肉にもこの数日間で容易く目標を達成できてしまった。
でも陽介が隣にいないのなら、ダイエットの意味なんてない。
二人で眠っていたシングルベッドはやけに広く感じるようになって、陽介が残した煙草の香りも次第に薄れて、あたしだけの匂いに戻りつつあった。
陽介に振られて以来、あたしは毎日抜け殻のようにぼんやり毎日を過ごしていた。
大学に行っても、元々陽介とは授業が被っていなかったから顔を合わせることがなかった。
だから余計に陽介のことばかり考えてしまう。
大学に来れば、辺りをキョロキョロ見回してアイツの姿を探してばかり。
陽介に対する想いは日ごとにますます募っていって、別れたという事実を未だ受け入れられなかった。
あんなにうまく行っていたのに、どこで歯車が狂ってしまったんだろう。
自分の取った行動を思い返すと、後悔しか残らなかった。
◇
「はあ……」
金曜日は、特に憂鬱だ。
なんて言ったって、あたしの元カレ・優真先輩と同じゼミがあるから。
優真先輩の浮気があたしにバレて、別れを決意してからは必要事項以外については一度も口を利いていなかった。
向こうも向こうであたしに気を遣って、話しかけてくるような無神経な真似をしてこないのがせめてもの救いか。
優真先輩と別れた当初は、このゼミの時間も苦痛で仕方なかったけれど、どこかで陽介が見守ってくれると思ってなんとか乗り越えてきた。
でも、その陽介はもういない。
心細さを感じつつも、あたしはこの憂鬱な時間を何とかやり過ごして、サッサと家に帰るつもり、だった。
「…………」
あたしがゆっくり顔を上げると、そこには大好きだったセルフレームの眼鏡をかけた元カレの少し気まずそうな顔が間近にあって、気まずさのあまりあたしは再び顔を俯けた。