モトカレシ-7
「……メグ」
陽介は白いタンクトップに淡いグレーのスウェットのハーフパンツという完全なくつろぎモードの出で立ちだった。
玄関マットに足を乗せ、身体を傾けてドアを開けた陽介の顔があたしを見た途端、ギクリと固まった。
ある程度予想はしていたけど、戸惑った表情をされるとやっぱり胸はズキンと痛む。
それでも、姿を見た瞬間に想いが溢れてきたあたしは、震える手をグッと握りしめてから、覚悟を決めて口を開いた。
「よ、陽介……。あたし、もう一度陽介と話し合いたくて……」
声を震わせながらもなんとか伝えるけれど、すでに泣きそうになってしまう。
やっと会えた嬉しさ、やり直したいという焦り、拒絶されるんじゃないかという恐怖が交錯するけど、気持ちを伝えないと後悔すると言う優真先輩の言葉を思い出し、なんとか自分を奮い立たせた。
「メグ……俺はもう……」
「お願い、陽介。あたし、陽介を信じてなかったわけじゃない。会えなくて寂しさが爆発しちゃっただけなの。
あの娘にはずいぶんひどいこと言ってしまったし、陽介にも迷惑かけたことは、ホントに申し訳ないって思ってる。
あたし、あの娘にも必ず謝る。それに、もう陽介がウザがるようなやきもちも妬かない。だから、もう一度チャンスを下さい……! 」
「…………」
なんとか涙を飲み込んで、陽介の顔を見上げる。
陽介はそのまま下唇を噛んで、黙り込んでしまった。
「あたし今でも陽介が好きなの。あなたがいない日々なんて、もう考えられない……」
あたしがそこまで言うと、陽介はやっとまっすぐあたしを見た。
「メグ……」
陽介は、ハンドルレバーを掴んでいた手を離しそっとあたしの頬に触れた。
指に張り付いたこの煙草の匂いが大好きだ。
その指があたしの唇をそっと撫で、あたしは思わず声を上げそうになった。
驚いて陽介を見れば、少し悲しそうな彼の瞳。それを見てたらあたしまで胸が締め付けられる。
「陽介は、もうあたしのこと嫌いになっちゃった……?」
優しく触れてくる手、うっとり目を閉じてしまうほど心地いい。
ほんのり温かくて、滑らかで。
もう一度この手が欲しい。もう一度激しく抱かれたい。
陽介をジッと見上げると、黙ってあたしを見つめていた。