モトカレシ-4
「たまに思うんだ。あの時もっと自分の気持ちを恵に吐き出していたらあのまま終わらないで済んだんじゃないかって。
オレを好きじゃないから身体を許さないの? お前が拒み続けるからすげえ不安なんですけどって。……なんか頭ん中それしか考えてないみたいだけど」
そう言って自嘲気味に笑う優真先輩は、ここであたしにも笑って欲しかったらしいけど、あたしはうまく笑える余裕がなかった。
と言うか、今になって知った新事実。
裸を見られて嫌われてしまうんじゃないかという不安から、優真先輩の胸に飛び込めずにいたことが、優真先輩を不安にさせていたなんて。
「……あたしがセックスを拒んでいたのは、裸を見られて優真先輩に嫌われるのが怖かったからなんです」
「え? そうだったの?」
あたしが申し訳なさそうに頷くと、彼は、
「何だよ、そうだったのかあ」
と拍子抜けしたみたいに大きなため息を吐いた。
「何だ、もっとお互い本音を言い合ってたら、きっと別れなくて済んだのかもしれないのに」
そこで陽介の顔がよぎって胸が苦しくなったけれど、あたしは
「かもしれないですね」
なんて舌を出して笑った。
もしも話なんてあてにならないとわかっていても、考えてしまう。
もしも優真先輩に身体を許していれば、今も幸せだったんだろうか。
陽介を好きにならずに済んだのだろうか。
やっぱり陽介のことが頭から離れなくて、また鼻の奥がツーンと痛む。
そんなあたしの心の内を知らない優真先輩は、ゆっくりあたしの側に再び歩いてきて、座っているあたしと同じ目の高さになるよう膝を曲げた。
また泣きそうになって俯くあたしの頭をワシワシ撫でる。
「やっぱり言葉って大事なんだよな」
「……言葉」
「うん。あの頃のオレ達はそれが足りなかった。だからお互いの不安がわからなくて自分なりに変な方向に解釈して、どんどんすれ違ってしまった」
「…………」
それはあの頃のあたしと優真先輩だけじゃなく、今のあたしにも言える。
くるみさんの存在を気にしすぎて自分を押さえつけた結果、あたしは感情を爆発させてしまった。
女の子達に対するやきもちも、くるみさんに対する不安も、正直に陽介に話していたら、あんな醜い形で爆発なんてしなかったかもしれない。