王子様の憂鬱-7
「大体、信頼してねぇなら転移魔法で無理矢理引き戻すと思うぜぇ?その方が安全で速いし」
魔力酔いはするが酔いなど1時間もすれば回復する。
カイザス国王の頼みなら他国の宮廷魔導師だって断れない。
現に、断れずにアースはゼインとカリーを連れて来ている。
ゼインはほらな?とばかりにデレクシスを見た。
「お父上は、デレク様の判断に間違いは無い……そうおっしゃっているように、私には思えますわ?」
フィシュラまでそんな事を言いだし、デレクシスは自分の勘違いに愕然とする。
フラフラしている第3王子など厄介者だと……そう思われていると思っていた。
何不自由なく窮屈な城……真綿で首を締められるような感覚に耐えきれずに逃げ出した。
それで見限られたと思っていたが……違うのか?
『親の心、子知らずってな……お前が城を出た事を心配しつつも誇らしく思ってんだよ、あのおっさんは』
最後に前足をペロペロと舐めながらグロウが締めくくった事により、デレクシスの顔がぶわぁっと赤くなった。
「あ、照れた」
「良かったねぇ〜カイザスパパはデレク坊っちゃんの事ちゃんとちゅきでちゃよぉ〜」
「う、うるさいな」
今度こそからかおうと、カリーが赤ちゃん言葉で言いながらデレクシスの頬っぺたを指でつつく。
デレクシスは赤い顔を隠すように右手で口元を覆った。
「で?護衛は俺らで良いのか?」
両手を頭の後ろで組んだゼインが、デレクシスに伺う。
デレクシスは視線をゼインに移し、カリーに流した。
暗殺者と魔物……それに精霊王子……無茶苦茶アンバランスなパーティーだが……。
「よろしく」
深々と頭を下げたデレクシスに、カリーとゼインはハイタッチして喜び、他の面々はやれやれと息を吐いた。