王子様の憂鬱-6
話を聞いたデレクシスはパチパチと目を瞬く。
元暗殺者のカリーに元奴隷で現魔物のゼイン……父王が選んだ割には毛色がおかしい。
「君達は父上が選んだ護衛じゃないのかい?」
「選ばれたワケじゃねぇよ?一応、面接っつうか魔法の鏡で顔合わせはしたけどな……俺らの事もちゃんと話したぜ?」
こんな奴らに王子の護衛を任せても良いのか、と。
「そしたら『選ぶのはデレクシスだ』ってさ」
直接合ってみて、選ばれたら頼む……ダメだったら、申し訳ないが良い護衛を探してやってくれ、だそうだ。
いつも勝手にデレクシスの事を決めていた父王のする事とは思えない。
「信頼されてるぅ〜」
からかうカリーの言葉に、デレクシスはゆっくりと顔を上げた。
「信頼?」
その顔は何を言ってるんだ?という感じで、からかったカリーは拍子抜けする。
「そうでしょ?クラスタを任せるとか、護衛は自分で選ばせるとか……王様ってもっと子供に甘々だと思ってたけどぉ?」
クラスタなんて危険な場所の責任者なんてダメ、とか言いそうだし護衛なら尚更、国の息がかかった人物を選びそうだ。
「……どうでも良いから放置……じゃないのかい?」
「「はあぁ?」」
デレクシスの言葉に、その場の全員が間抜けな声をあげる。
「いや、クラスタ統治なんて危険なのは分かりきった事をわざわざやらせたりとか……」
「んなもん精霊人のお前を自慢してるようなもんだろが」
クラスタは魔物が多い……そこの統治なら南の大陸の王族で唯一の魔力持ちのデレクシスが適任だ。
南の大陸の王族会議で誇らしげだった、という話をアースは他の国の王から聞いていた。
「死んでも困らないからじゃなくて?」
「アンタな……南の大陸で、お前と結婚したい姫君がどんだけ居ると思ってんだ?カイザスと繋がりがもててイケメン王子なら、第3王子でも大歓迎だっつうの」
特に、ファン魔物襲撃事件で活躍してからは『軽薄王子』の汚名はなくなり、今や『精霊王子』だ。
そんな輝くような異名を持つ王子を手に入れようと、南の大陸では姫達が躍起になっているらしい、とキアルリアは姫の情報を話す。
「精霊王子?」
半年近く故郷を離れているうちに、あだ名が変わっておりデレクシスは困惑した。