王子様の憂鬱-2
「そうなんです!そりゃあ私は第3王子ですし?自慢出来る息子じゃありませんけど……何もクラスタに流さなくても……と思うわけですよ?!」
南の大陸の最南端クラスタは、魔力が濃く存在する『黒海』に一番近く、そこから発生する強力な魔物が多く居る土地だ。
どの国も統治を嫌がる場所に要塞を造るから、そこの責任者になれ……だなんて……死ねと同意語だ。
「別に死ねっつってるワケじゃねっだろ?」
ドグザールの意見にデレクシスは盛大に息を吐き出す。
「まあ……そうですけどね……どう考えても厄介払いにしか思えないんです」
フラフラしてる第3王子など、どこの貴族も婿に欲しがらない。
政治的に役に立たないのなら命を張れ……という事だ。
項垂れるデレクシスに、ドグザールとイズミは苦笑するしかなかった。
いつまでも他国の王に愚痴っていても仕方がない。
とりあえずは父王の決めた護衛にちゃんと挨拶を……きちんとした挨拶文を考えなければならない。
どうせどっかの貴族と繋がりがあるのだろう。
礼儀正しくしておかなければ、後で何を言われるか……正直、面倒だ。
だから一般の、出来れば冒険者辺りを護衛にしたかったのだが、デレクシスの身分を聞くと皆断ってきた。
そりゃ、そうだろう……気ままな旅に王族なんか絡んだら、それこそ面倒くさい事この上ない。
自分が冒険者でもお断りだ。
(バリーって変わり者だったんだな……)
カイザスに居た時は皆我先にと護衛をかって出てくれたから当然と思っていたが、世間の事を色々と知った今『一緒に旅をしてくれないか?』『オッケー。いいぜ』のやり取りの方がおかしいのだと気づく。
バリー以外の人々はデレクシスに印象づける為の、いわゆるおべっかだった訳だ。
だがバリーは違った……合ったばかりの頃のデレクシスは王族なのを良い事に、上から目線でかなりいけすかない態度だった。
なのにバリーは怒る事なく『しょうがねぇな』と色々面倒をみてくれた。
そのバリーもゼビア騎士団に入って、いきなり団長に抜擢されている。
ゼビア騎士団は見る目がある……彼は組織をまとめるのに向いている。
視野が広くて面倒見が良くて、熱い心を持った正に男だ。
王族目線ではなく、1人の男として尊敬している。
言っておくが、デレクシスにゲイの気は全く無い。