エピローグ-1
「大丈夫かい? 君?」
王子様が私を抱き起こしてくれた。
私は思い出した。今のは夢ではなく、失っていた記憶だったのだ。
私は聞いた。その花束は誰に上げる積もりですか?と。
「これは、私の命を救ってくれた少女に捧げる花です。ここで彼女を見失いました。
彼女は生きていたら必ずコンサートに来てくれると言いました。
でもとうとう現れなかったからきっと亡くなったのだと思います。
こんな悲しいことはない。もう一度本当に会いたかった。
短い間だったけれど何故か彼女とは運命の出会いのようなものを感じたから。
そして彼女が亡くなったのは私のせいだ。
私を守ろうとして彼女は自分から手を振り解いて流れの中に消えて行った。
彼女の死には私が責任がある。
彼女に償うことができない分、君を養女として迎えて大事にする積もりだ」
私は聞いた。私のどこがその人に似ていたのですか?
王子様は私の両手を掴んで手の甲を上にした。
「最後に彼女の両手をつかんだ時、手の指の爪を見たんだ。
爪の底に白い模様があった。10本の指全部に」
なるほど私の指の爪を見るとそういう白い模様がある。
確かに言われてみれば10本全部に。でもそれは珍しいことなのか?
私は言った。私はその人の代用品は嫌です。ちょっとここで待っていて下さい。
その人を連れて来てあげられるかもしれません。
王子は大きな花束を抱えたまま凍りついたようになった。
屋上を出て、私は2階まで戻ると必死に2つの物を捜した。
そして散乱したゴミの中からやっと旧式ゴーグルとライフジャケットを見つけた。
泥だらけのゴーグルとライフジャケットを身につけると私は屋上に向かって歩いて行った。
待っていて下さい。私の王子様。今その人に会わせて差し上げます。
私は心の中でそう言っていた。
私は屋上の入り口で一歩前に進んだ。
私の目の前には大きな花束を抱えた王子様が立っていた。
私の姿を見て驚いて目を見開いて!
こんにちは、私の王子さま。
(完)