美咲【2】〜8月21日(水)〜-2
「何をするんですか!当たったら危ないですよ!」
「そうですね……当たればよかったのに」
「なっ!?」
この女性はどうかしている。いきなり私を殺そうとしてくるなんて。
「はや――」
隼人に事情を説明してもらおうと思ったのだが、いつの間にか姿が消えていた。こんな時にどこ行ったのよ!
「よそ見を、」
「っ!?」
「するなぁぁっ!!」
横薙ぎに払われた性剣をギリギリのところで避わし、屋外へと逃げる。
相手は全裸。さすがに追ってこないだろう。
「待ちなさいっ!」
「えっ!?」
私の読みは甘かったようだ。
女性は全裸のまま、靴のひとつも履かずに追いかけてきた。
早朝とはいえ少し明るい。誰かに見られる可能性は大いにある。
「なんなのっ、あの人っ……!」
なぜ彼女がそこまで怒り狂ってるのかわからなかったが、足を止めれば確実に殺されると思ったので、ただひたすらに見知った町中を逃げ回る。
金髪、日本人とは思えない裸体――隼人が言っていた留学生とは、恐らく彼女のことなのだろう。
中学時代は陸上部に所属していたこともあり、少しずつではあるが彼女との距離が開いていっている。
「百メートル十二秒の私に、よく粘るじゃないっ……」
かなり長い距離を全速力で走り続けているが、まったく息が切れない。
性剣士となり体力が飛躍的に向上しているから、のようだ。
今ならあのライバルを抜かせるかも、なんてそんな裏設定はないんだけれど。
「あっ」
いつも通っている高校の校門。それほど高くはないそこになぜか脚立が置かれていたので、それを使って高校の敷地内へと逃げ込む。
振り返ると、校門の向こうにしつこくも未だに追ってくる留学生さんの姿が見えた。
「やるしかない……」
あのままではいつまでも追ってくるだろうし、恐らくなんらかの誤解をしている。話し合えばなんとかなるかもしれない。
グラウンドの中央に立ち、視界の端にある性剣を手に取る。護身用だ。
「セクスキャリバー……あなたを頼る必要があるみたい」
性剣は何も返さない。意思があるわけではないので当然か。
「ようやく観念したみたいですわね、ミサキ」