隼人【3】〜8月21日(水)〜-4
「やぁっ、少しでもっ…あなたのことが、好きだと思った自分がぁっ、愚かしいっ」
「……え?」
その言葉に思わず手を止める。
好き……?ツツーリアさんが俺を?昨日会ったばかりなのに?
いや、しかしこの情報は使えるぞ。
「実は俺もツツーリアさんのこと好きで、どうしても我慢できなくてこんなことしちゃったんだ……ごめん」
思ってもいないことを口にすると、彼女はかぁぁっと顔を赤らめた。
「で、でも彼女がいるのでしょう!?」
「いたけど……振られちゃった」
「えっ」
もちろん嘘です、と心の中で付け足す。
「それで、悲しくて、泣きたくて……こんな、最低なことしちゃって……」
「…………」
俺のホラ話を真面目に聞いてくれるツツーリアさん。
「傷つけて、ごめんなさい……」
そりゃあちょっとは罪悪感もあるけれど、でも反省はしていない。これはユグドラシルのせいなんだから。絶対!
「……彼女とは、別れたんですの……?」
「うん……」
「……でしたら、その、夜這いなどせずに言ってくだされば、ワタクシも、怒らずに済んだと思いますのよ……?」
あ、信じちゃったよこの人。
なんかごめんなさい。でも今さら『実は嘘です』なんて言ったら殺されるだろうな。
「……あの、逃げないのでどいてくださる?」
そう言われ、俺は彼女の上からどいた。
逃げようとしても無駄なんですけどね。
「ここ、ホテルですの?」
「まさか。家の地下室だよ」
セックスするために作られた、ね。
「…………」
ツツーリアさんの視線は俺の股間、さっきからずっと勃ちっぱなしの――暗い話をしているときも勃っていたから怪しまれると思ったのだが、案外バカなのかもしれない――肉棒に向いている。
「それ、いつ小さくなるのですか……?」
「それって?」
何を指しているのかわかったうえで惚(とぼ)けてみせる。
「で、ですからその……それ、ですわよ……」
顔を赤らめて言うツツーリアさん。
「『それ』じゃよくわからないですよ。主語を言ってくれないと」
「ぺ……ペニスのこと、ですわよ……」