隼人【2】〜8月20日(火)〜-5
「ハヤトさん。さっきから気になっていたのですが、ワタクシの名前はツェツィーリアですわ」
何か間違えていたかな?英語は苦手だけれど、名前を間違えるなんてことは人としてどうなんだ。
「ツツーリアさん」
名前を間違えないように吟味して、今度こそ正確に名前を呼んだ。
「……それでいいです」
なぜかはぁ、とため息をつくツツーリアさん。
「ツツーリアさんって年いくつ?」
歩きながら気になったことを口にする。
「もうすぐ十八ですわ。ハヤトさんは?」
「十七。外人って見た目より若いことが多いなー」
何気なくそう言っただけだった。
実際外人は二十代に見えてまだ十代、なんてのがよくある。あくまで主観だけど。
「その呼び方……やめてくださる?」
「え?」
歩を止めて顔をしかめるツツーリアさん。
何か気に障ることを言ってしまったらしい。
思い返してみるが、思い当たる節はない。
「ワタクシは外人ではなくってよ!?ドイツ人ですわ!」
すごい剣幕で怒鳴られたが、未だに彼女の言いたいことがよくわかっていなかった。というかドイツ人だったのか。
「あっ」
彼女はまたやってしまったという感じで口を押さえ、おそるおそるといった風に俺を見る。
「ハヤトさん、ごめんなさいその、ついカッとなってしまって」
「あ、いや。俺のほうこそごめん」
一応流れとして謝っておく。
「ですが、あの、ワタクシ日本の方が仰る『外人』や『日本語上手いね』という言葉が、どうしても好きになれなくて」
そこでようやく何に対して怒られていたのか気付く。
俺が彼女――というか世間一般の外国人――に『外人』と言ってしまったからなのだと。
「ごめん」
意味を理解したうえでもう一度謝る。
「もう『外人』なんて言葉は使わないよ」
ツツーリアさんの胸元を見ながらそう言って誓う。
「……ありがとうございます。ハヤト様はお優しいのですね」
「え、んや、普通だよ」
巨乳の娘に『優しい』なんて言われて嬉しかった。
ふー。危うく勃起するところだったぜ。