隼人【2】〜8月20日(火)〜-2
「ユグドラシル――隼人によって性的な刺激を与えられるか、性剣を使って戦えばいい」
「戦うって……バトル漫画じゃあるまいし、美咲にそんなことさせられるかよ!」
「そうだね。ならお前のやることは決まっているだろう?」
スタッ!と俺は勢いよくベッドから立ち上がる。
発情を抑制させる方法が2つしかなくて、片方が戦闘なら俺が選ぶのはもう片方に決まっている。
「おっと。僕の話はまだ終わっていないよ」
「なんだよ。早く美咲のもとに行ってやりてーんだけど」
行ってあげたいという意味であって、行ってヤりたいという意味ではない。
誰に言い訳しているんだ俺は。
「ほら、受け取れ」
「ん?」
どこにでもあるような鍵を渡された。
一体なんの鍵だ?
「それは地下室の扉を開くためのものだ」
「地下室って、うちの?」
「ああ」
この家には地下室が存在する。
といっても施錠されていて、入ったことは一度もないんだけれど。
「あそこには歴代のユグドラシルおよび性剣士およびその関係者が記した文献が残っているんだ」
ユグドラシルの歴史図書館ってやつ?
だが別にユグドラシルの歴史に興味などない。
「だが地下室の主目的は歴史の勉強じゃあないんだよ」
「?他に何かあんのか?」
「ユグドラシルにとって、とても大切な部屋だ。まぁそうだね、防音性は優秀とだけ言っておこう」
「防音性?」
外に音が漏れないってことだよな。
ユグドラシルにとって大切で、防音性に優れていて、ユグドラシル関係の文献が――ああ。
「なるほど」
ようは性剣士とイチャつくところなわけね。
「それから、三十分ぐらい後に駅前に人を迎えに行ってほしいんだ」
「……んなもん、無理に決まってるだろ」
これから美咲とエッチするんだから。
「実は留学生がうちにホームステイすることになっていてね」
「……初耳だぞ」
なんだよホームステイって。実在するのかそんなこと。テレビ局の企画として存在しているわけじゃなかったんだな。
「僕は用事があるから、お前に迎えに行ってほしい」
「だから無理だって」
「留学生は金髪の女の子だよ?」
「俺は美咲一筋だ。他の女には興味ない……少ししか」
「巨乳だよ?」
「しかたない行ってやるか」
男の、いやユグドラシルの性には抗えなかった。