隼人【1】〜8月20日(火)〜-2
密室。ふたりきり。恋人同士ですること。
ダメだやっぱエロいことしか浮かばねー!
「もー。ホントに何も浮かばない?」
そんなつもりはないんだろうけど――胸を強調して俺に迫ってくる美咲。
「え、と……キス、とか……?」
結局無難なことにしておいた。
胸を揉みたいなんて紳士の俺が言ったら、幻滅させちまうもんな。
「そんなことでいいの?」
「そ、そんなこと?」
とても大人な意見のような気がするんだけれど、もしかして美咲はキスの経験があるのだろうか。俺はまだなのに……。
いやしかし、過去に美咲のゆるふわメロンにメロメロになった男がいたんだとするとおかしくはないか。
……まさか非処女ではないよね。
「まぁいいけど。それで隼人は、どんなふうにキスをしてくれるのかな?」
「えっ!?ど、どんなふうって……」
キスにやり方とかあるのか!?普通に唇にちゅーってすればいいだけじゃないのか!?
くそぅ、キスより先は勉強してきたっていうのによー!
「…………」
美咲は瞳を閉じ、俺がキスするのを待っている。
この隙に胸を揉むのもあり……いやいや、紳士がするべきことじゃない。
「キス、します……」
俺はそう告げた。言ってからなんでわざわざ言ってんだよと自分を殴りたくなってくる。
「…………」
美咲に顔を近付ける。
それを感じとったのか、美咲は若干顔を上げた。
息がかかりそうな距離に、美咲の存在を感じる。
「んっ……」
そうして唇を重ね合わせた。
「い、やぁ……!?」
まさにその瞬間、美咲が悲鳴をあげた。
もしかして俺とキスするのはイヤだったのだろうか、などとネガティブなことを考えてしまう。
「やだ……何、これ……体が、熱い……!」
自分の体を抱いて息を荒くする美咲。
「美咲、具合でも悪いのか……?」
「はぁ、はぁ……違う……違うけど……」
美咲は俺と目を合わせ、一歩後ろに下がった。
「今日は、帰る……」
「え、まだ来たばっかじゃないか……」
「ごめんね、でも……なんだか、おかしくて……」
苦しそうに部屋を出て行こうとする美咲。
「送ってくよ」
「やだ……私に、構わないで……」