6-1
部活で賑わいを見せる校内は、けたたましいサイレントと共に様相を変えた。
元は状況が飲み込めず呆然としていた為、暁生が救急車を手配した。
その後保健の先生や体育教師が総出で応急手当てに走り、聞き付けた生徒達も集まり一帯は騒然となった。
次々に入り込んでくるパトカーに、救急車。
取り巻く野次馬。
野次馬を抑える教師達。
鳴り止まない携帯カメラのシャッター音。
用具室一帯を取り囲む、トラテープ。
平穏な日常は、容易く崩れてしまった。
「俺はあっちゃんと行くよ....。ちゃんは、絢ちゃんの側に....」
「.....あぁ.....」
「.....てっちゃんには連絡しとくから....」
「....わりぃな...」
「.....何言ってんの....。あ、げんちゃん」
暁生はさり気無く近づいて、元のポケットに何かを入れた。
「ドア側に倒れてた二人の携帯。念のため...」
そう言ってすぐに元から離れた。
「念のため......」
「....ありがとう」
絢と誠が担ぎ込まれていく様を見ながら、目を合わせずに交わすやり取り。
それぞれが別の救急車に乗り込む。
重なっていたサイレン音は、やがて二手に別れ、消えていった。