6-6
-----------------------------------------------
「...元ちゃん、ご飯食べた?」
「いや......」
「すぐ作るから、ちょっと待っててね」
「.....いらない....食欲ない」
「ダメ!こんな時だからこそちゃんと食べないと!ね?」
美帆は、気丈に振る舞った。
気を抜けば、取り乱してしまいそうだった。
「...うん.....ありがと...」
美帆が料理をしている間、元は真っ黒なテレビの液晶を無言のまま見詰めていた。
美帆も、敢えて声は掛けなかった。
「...お待たせ。さ、食べよ?」
「....うん。頂きます」
何時もなら、美帆のPCから元が貸した音楽を流して、会話を楽しんでいる。
しかしこの日のこの部屋には、音も言葉も無かった。
世界中の人間全てが一斉に眠りに就いたのだろうか。
耳がおかしくなりそうな程の静けさだった。
「......ご馳走さま。おいしかったよ」
「うん。作った甲斐があったね」
先程までより、少し明るい元の声色に、美帆は安心した。
「俺、片付けるから。みーちゃん、ちょっと休んで」
「うん。ありがとう」
煙草を咥えて食器を洗う。
見慣れた元の姿があった。
落ち着かない美帆は元の隣に立ち、コーヒー豆を挽き始めた。