6-5
「元ちゃん.....」
「.......今日は、帰ろう」
「.....うん....」
「.....みーちゃんち、行っていいかな....」
「....当たり前でしょ。いいに決まってるよ....」
「....ありがとう...」
続かない会話の後、無言のまま二人は歩き出した。
病院の外は、いつの間にか暗くなっていた。
246を行き交うヘッドライト。テールランプ。
喧騒は、二人の耳には届かない。
見慣れた街並みも、赤の他人の様に冷たい。
街が冷めてしまったのか。
元が熱を奪われたのか。
元の頭の中は、白一色に塗り替えられた。
病院を後にした時、美帆は何も言わず元の左手に右手を重ねた。
掌から伝わる温もりに、元はひと時の安息を得る。
語る事の出来ない感情と擦れ違っては追い抜かれる。
脱け殻のようになった元を、美帆は無言の優しさと共に家に迎え入れた。