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仕事としてなのは理解出来るが、落ち着き払った対応に元は怒りを覚えた。
入れ違いで、鉄弥と真紀が走ってくる。
相当走ったのか、二人の額には汗が滲んでいた。
真紀は泣きはらしたのだろう。
目は真っ赤で、腫れている。
「テツ....真紀ちゃん....」
「げんちゃん!絢ちゃんは...?
」
「今はもう寝てる。怪我自体は大丈夫。あとは精神的なとこだと....」
「そうか....」
言葉が続かない。
目に涙を溜めながら、真紀は言った。
「元くん......ごめんね.....私も一緒にいれば...」
「何言ってんだ....真紀ちゃんは悪くないよ....」
「....私ね、絢ちゃんから聞いてたの....。放課後、男子に呼び出されたって....。私も着いていこうかって言ったけど....笑いながら大丈夫だよって......」
そこまで言って、真紀が泣き崩れた。
それを聞いた美帆も、声に出さずに泣いていた。
鉄弥は、何も言わずに真紀を懐抱する。
「....てっちゃん、今日は真紀ちゃん連れて帰りな。どうせ、まだ面会出来ねーし....」
「....わりぃな....力になれなくて...」
「....来てくれただけで十分さ」
元は、息の荒い真紀に穏やかな声で言った。
「真紀ちゃん、ありがとう。絢は、大丈夫だから。死んだわけじゃねえし...」
「.....うん.....」
「ね?だから今日は帰ろう。面会可能ってなったら、また来てよ」
「.....うん.....」
言うと、元は鉄弥に目配せした。
鉄弥は、真紀を抱えて廊下の向こうに消えていった。
その後ろ姿を見送る目には、感情の一つも伺えない。