6-3
「....げんちゃん、絢ちゃんは..」
「.....大丈夫。怪我はそれほどじゃないし。今、カウンセリング受けてる.....」
「そうか.....」
「まっちゃんは.....」
「一応、無事。左肩に深い刺し傷と二の腕切りつけられてて出血がヤバかったらしいけど、生きてる」
「よかった......」
「今、てっちゃんと真紀ちゃんも一緒。すぐそっち行くって...」
「....あぁ...」
「げんちゃん....大丈夫....か?」
「......あぁ....わりぃな.....」
「....げんちゃんが謝ることじゃないよ...」
「....あぁ....。あっちゃん、誠の側にいてやってな...。そっち行けなくてわりぃ....」
「気にすんなって...。げんちゃん....」
「....ん?」
「....無理すんな。休めよ....」
「....うん。ありがと....」
手から落ちる携帯。
ほんの一瞬で行方不明になった、何時もの世界。
廊下には、落ちた携帯の音だけが響き渡った。
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駆け付けた美帆と、二人で医師を待つ。
鉛の様な空気が漂う。
静寂を破るように、絢の病室の扉が開く。
医師とカウンセラーが出てきた。
美帆が駆け寄る。
「あ...あの...絢ちゃんは....」
「今日は安静にさせてあげて下さい...」
「会いたいんですが....」
「今は眠っていますので、日を改めて。明日一日、もう一度検査とカウンセリングを行います。面会可能かどうかの判断も含めて、こちらから連絡させて頂きますので。今日の所は、お引き取り下さい」
元は、カウンセラーと美帆のやり取りを無言で聞いていた。
ほどなく医師とカウンセラーは、一礼をして去っていった。