想-white&black-N-1
身体が熱くなる。
それは湯船に浸かっているせいだけではないことは私自身気づいていた。
不意にぬるりとしたやわらかいものが耳をなぞっていく。
彼は私が耳が弱いことを知っているのだ。
入るわけがないのに舌先を穴の奥へと挿し込もうとしてくる。
その度に濡れた唾液の音が頭で響いてたまらなくなった。
「あ……、ああっ」
「さすがにここは声がよく響くよな。好きなだけ声を上げればいい」
声が少し漏れただけで倍になって響き返ってくる。
それをわざと愉しむように彼の指は私を更に追い上げていく。
下から自分の脚で私の膝裏を引っ掻けるように開くと、片手を胸に残したままもう片方の手を花芯に伸ばしてきた。
指先で軽く触れながら円を描くように花芯を弄び始める。
「やっ、あっ、あん……んうっ……」
もどかしい触れ方にたまらず腰が揺れるのを止められない。
更に湯船の中で逃れようと思っても滑るし脚は固定されて、身体がうまく動かせなかった。
それに加えて楓さんが絡み付くように抱き締めているせいもある。
逃れられない。
「お前はこうされるのが好きだろう?」
耳元に唇を寄せながらそう囁くと花芯を摘まみ、指先同士を擦り合わせ始めた。
「ああ……っ」
一際高い悲鳴にも似た嬌声が浴室内に響き渡る。
彼は私がどうすればより感じるのかを熟知している。
どんなに心が抗っても身体は楓さんの行為に応えていく。
まるで彼を楽しませるためにこの身体はあるようだった。
「ああ、やっぱりこうするといい声で啼くんだな。すっかりこうされるのが気に入ったようだ」
表情こそ見えなかったが声は機嫌が良さそうな響きを含んでいる。
「助け……、て……」
疼く身体を早く鎮めてほしいと思った。
このまま焦らし続けられては気がおかしくなりそうだった。
そこまで私の身体は楓さんの愛撫にに反応し、求めるように躾られてしまったのだと思うと一瞬胸が痛んだがすぐに痺れるような快感が攫っていく。
「早く……、お願い、だから……」
その先の”欲しい”という言葉は恥ずかしくて口にできなかった。
「お願い? 何をどうしてほしいのか逆に教えてくれよ」
そんなこと分かってるくせにそんな意地悪を言う楓さんが恨めしい。
私を追い込んでからかって愉しんでいる。
やっぱり酷い人だ。
「このままじゃ熱いだろう。こっちへ来い 」
私がその先の言葉を躊躇っていると楓さんは小さく笑いを漏らし、両腕で私を軽々と抱きかかえシャワーの前に座らせた。