旅館玄関 瓶もシモも旅館が責任を持って解決-5
「で、でもそれだったら、参加できない…」
そのやり取りを聞いていた当の姫美は、自分の局部がキュンキュンに進化した喜びよりも、乱交に参加できないことを嘆いた。
「ああん、そんなの無いよう、せっかくここまで来たのにい、うわあああん」
局部の痛さと諸々の感情が相交わった姫美は、突然、涙をポロポロと流しながら泣きだしてしまった。
とにかく真面目な姫美は何でも真剣に考える性質なので、美弥子たちの冗談が通じなかったのだ。
慌てた夫は直ぐに姫美を慰めた。2人きりだと可愛い姫美のその性質も、この淫らで楽しい乱交の場面では堪らない。
「わっ、わっ、姫ちゃん、だ、大丈夫だよ、オレが恵子ちゃんのお母さんに頼んで上げるから」
「えっ?えっ?なに?そ、そうよ、姫ちゃん、気にしなくてもいいのよ。今回は恵子の友だちでもあることだし、特別ルールで参加を認めるから」
美弥子は自分の冗談が通じず、それを真剣に受け止めて大泣きする姫美に驚いた。
大泣きする姫美を前に今さら冗談だったとは言えず、特別ルールの適用を用いて慌ててフォローした。
「わああん、ダメだよう、友だちだといって、ズルいことはダメだよう、わああん」
幼少の頃より道徳観念を教え込まれた姫美には、自分の地位を利用したズルいことは許されないことだったのだ。
こんな場面にまで道徳観念持ちこむ姫美のその性質は、淫らな者たちにとっては未知との遭遇だった。
大泣きする姫美を見ている内に、男たちのイキリ勃ったモノも萎え、女たちのワレメの奥から溢れた熱い愛液もひんやり冷やされていった。
淫らな者たちは、ただただオロオロとするばかりだった。
しかし慌てることはない。館内でのトラブルは女将が解決するのが温泉旅館の暗黙のルール。先代女将から叩きこまれてそれを自覚する女将は、直ぐに対処法を佐代に指示を出した。
「そうだ、佐代ちゃん、厨房にある赤マムシドリンク持ってきて」
女将が佐代に頼むと、横に居た旭が首を振った。
「厨房のは赤マムシは女将さんの指示で、鮑の間に全部持っていったはずですよ。だから厨房の冷蔵庫にはありません」
「あっ、そうだったわね。じゃあ、佐代ちゃん、悪いけど鮑の間から取って来てくれる?」
「む、無理です。赤マムシはみんな飲んでしまって、空瓶はさっき捨てました」
それを聞いた姫美はさらに声を大きくして泣きだした。
「うわああああああん」
姫美の泣き声が響き、頼みの綱の女将までがオロオロする始末だった。
しかしこの時、みんながオロオロとする修羅場の中で、唯一人だけ冷静になっていた者が居た。
その者は静かに立ち上がるとオロオロする者たちに声を掛けた。
「ドリンク瓶、有ります!」
姫美の泣き声をさえぎるようにその声は玄関に響き、それを聞いた姫美は一瞬で泣き止み、玄関の喧騒が止まった。
淫らな者たちは「へっ?」という素っ頓狂な声を出すと、一斉に声のした方を振り向いた。
「赤マムシの中身の入った瓶、有ります」
みんなが注目する中で、デカデカビタミンを握りしめていた女が、同じことをもう一度繰り返した。
一瞬にして修羅場を止めた者の正体は、さっきまで怯えていた仲居の麻耶だったのだ。
「え――――――――!」
堂々とした麻耶のややガ二股気味の立ち姿。それを見た淫らな者たちは、さっきまでとのギャップに一様に驚いた。
「うそ!どこどこどこ?どこにあるの?」
驚いた女将が麻耶に聞くと、麻耶はニッコリと笑って着物の裾をまくり上げた。
「あたしのおまんこに入ってます」
「え―――――――――!」
淫らな一同は再び驚愕の声を上げた。