嫉妬、そして……-1
不安に駆られた日々は、次第にあたしの心をじわじわ蝕んでいく。
陽介に抱き締めてもらえばあっさり解決するのは目に見えてわかっているのに、それができないのはタイミングの悪さと言うより他なかった。
なんでも陽介のアルバイト先で、スタッフ3人が一気に辞めてしまったらしく、怒濤のシフトを組まされたとか。
元々遅番だった陽介は、連日連夜クタクタになってアパートに帰り、後は死んだように眠るだけ。
そして、起きたら大学……というローテーションが出来上がっていた。
それでも、会える時間なら作ろうと思えば作れた。
陽介は、自分がアルバイトしている間は彼のアパートで待ってていい、とすら言ってくれた。
けど、それが出来なかったのは、くるみさんの言葉が浮かんできたから。
自分のワガママで陽介を疲れさせたくない。
その思いが陽介に会いに行く勇気を奪っていた。
◇
「はあ……」
呆けたようにため息を吐きながら、頬杖をつく。
「ちょっと、さっきから何回ため息吐いてるの」
そう言って、ため息を吐くあたしにため息を吐く輝美。
ため息ってのはあくび同様、伝染するものらしい。
今日の講義を全て終えたあたし達は、いつもの如く地下にある学生食堂でお茶をしていた。
すでに4時半をまわっていたせいか、学生の姿もほとんどなく、閑散としている。
そんな静かな空間に飲み干したアイスコーヒーのグラスから、カラン、と氷が小さな音を響かせた。
「もう二週間、か……」
「そんなに臼井くんと会ってないの?」
「うん」
すれ違いの日々は、もう二週間にもわたっていた。
もちろん電話やメールはしていたけれど、電話の向こう側の陽介の疲れた声を聞くと、長電話も憚れる。
「もう少しで新人が入ってくるから、ちょっとだけ我慢してな」なんて言ってくれた陽介に理解を示したつもりだけど、会いたいという禁断症状がすでに出始めてる。
「あー! 陽介に会いたいよお!」
あたしは乱暴にグラスを掴むと、中の氷を口に含んでガリガリとかじった。