嫉妬、そして……-6
「ね、何でわざわざ陽介に訊くの?」
「え?」
「陽介ってあまり真面目にノートなんて取るタイプじゃない。他に真面目に講義受けてる人なんてたくさんいるよ? なんで陽介じゃなきゃダメなの?」
「…………」
目に涙を浮かべ、何も言えなくなってしまう小出さん。
「それに、ベタベタ触っちゃってさ。あなた、もしかして陽介のこと好きなの?」
一度不満を態度に出すと、もう止まらない。
いろんな女の子が陽介に寄ってくる苛立ち、くるみさんに対する不安、陽介に会えない寂しさ……、そんな負の感情達が一気に押し寄せて、あたしの心の中は爆発してしまった。
陽介に近付かないで、触らないで。
「……メグ、もうやめろ」
「何なの、ホント。陽介はあたしと付き合ってんのに、全然遠慮無しに馴れ馴れしく近付いてきてさ。隙あらば狙ってんでしょ?」
自分でも制御できなくなったあたしを、陽介が腕を掴んでたしなめる。
ポロッと涙を流す小出さんに、さらに舌打ちが出た。
「泣きたいのはこっちの方よ! あたしがいても陽介を狙うバカ女達は一向に減らなくて、不安ばかりが募って……。陽介はあたしのものなんだからもう話しかけたり近付いてこないでよ!」
あたしがそこまで言い切った瞬間、頬に走る痛み。
目の前にはあたしを睨む陽介の顔。
自分が陽介に平手打ちをされたと気付くまで、あたしは数秒の時間を要した。
「……陽……介?」
「いい加減にしろよ。お前、言ってることが無茶苦茶なんだよ。小出さんはホントに関係ねえってのに」
未だ痛みが残る頬に触れた手に、ジワッと濡れた感触。
「だ、だって……」
こうでもしないと、女の子は次から次へと陽介の所に寄ってくるじゃない。
でも、陽介が本気で怒っているのを目の当たりにすると、何も言えなくなってしまう。
「俺、お前を大事にしたいからって携帯の番号もアドレスも全部変えて、今まで繋がってた女と全部切ったって言っただろ? それでもお前はまだ不満なの? 話しかけてくる女全部に『話しかけんな』って突っぱねなけりゃなんないの?」
「…………」
黙って下唇を噛みしめて俯いていると、陽介が思いっきりため息を吐いた。
それは、あたしに心底うんざりしたような、失望が込められていた。