嫉妬、そして……-5
講義についての話ならやきもちを妬く必要なんてない。
って、わかっているつもりだ。
でも……。
女の子は、陽介の二の腕に触れてみたり、肩を叩いたり。
よく見れば何となく頬を赤らめてキラキラした笑顔を彼に向けて、それは嬉しそうな顔をしている。
その娘の笑顔を見た瞬間、例えようのない不安がまた押し寄せてきた。
挙げた右手は行き場を失くしてダラリと力なく垂れていき、唇は無意識のうちに思いっきり噛み締められていた。
人の流れに逆らわないように陽介と女の子は、壁際に移動して楽しそうに話をしている。
いつもあたしに向けてくれる笑顔をその娘にも向けていたのを見ると、頭の中で何か張り詰めていたものがプツンと切れたような音がした。
カツカツとわざと大きな音を鳴らしながら近付くサンダル。
バッグを握りしめる手はしっとり汗ばんで、力が入りすぎて白くなっている。
バクバク跳ねる心臓を宥めるようにフウッと息を吐いてから、あたしは二人の元へたどり着いた。
「おお、メ……グ」
サンダルを鳴らす音に気付いた二人。陽介はいつも通りニカッと爽やかな笑顔を見せようとしていて、固まってしまった。
そして、あたしを見てギクリと身体が強張った女の子。
それほどあたしは怖い顔で女の子を睨み付けていた。
陽介の服の裾をつまんでいた女の子の手をバッとはたき落とす。
この人はあたしのものなんだから。
「人の彼氏に馴れ馴れしく触んないでくれる?」
これ以上ないってくらい冷めた目で彼女を見やると、
「あ、ご、ごめんなさい……私、そんなつもりじゃなかったの……」
と、泣きそうになって俯いた。
「おい、メグ。そんな言い方ねえだろ? 小出さんはただ来週の小テストの範囲を教えて欲しいって言ってただけなんだから」
見かねた陽介は、あたしをなんとかたしなめる。
男って、ホント鈍感。この娘が陽介を見つめる視線の熱っぽさに全く気付いてないんだから。
隙あらば近づこうとする女の子達に辟易していたあたしは、そのたまった鬱憤を小出さんとやらに向けた。