嫉妬、そして……-4
正面玄関前で一人佇むあたし。
外を見れば、閑散した校内とは打って変わって、帰宅ラッシュで賑わう街並み。
夏の地獄のような蒸し暑さは少しずつナリを潜め、少しだけ秋の涼しげな風が吹いていた。
陽介と初めて過ごした夏ももう終わる。
こうやって一つ一つ、季節の移ろいを陽介と感じていける幸せをじんわり噛み締めると、自然と顔も綻ぶ。
やっぱりあたしは陽介が大好きで、これからもずっと一緒にいたいと思う。
長袖を着ている人がちらほら見受けられる中、陽介に対する気持ちを確信したあたしは、少し汗ばんだ二の腕を擦りながら再び校舎の中を見つめた。
疎らに学生さ正面玄関から吐き出されていく中で、あたしは「あっ」と小さな声を出した。
ボタンを開けた水色のシャツ。中にはお気に入りのブランドのTシャツ。モノトーンベースのチェックのハーフパンツ。
大好きな人の姿は、どんな人混みの中でも一瞬で見つけられる。
みるみるうちに、胸が踊る。
久し振りに見たその愛しい姿に、ちょっぴり目の奥がジワリと痛くなったりもして。
それほどあたしの身体が、いや、細胞が陽介を恋しがっていた。
視界の端にある階段から見慣れた人影が降りてくるのを確認すると、あたしはカツンとサンダルのヒールを鳴らして近付いた。
やっと、やっと会える……!
「陽す……」
右手を大きく挙げて、彼の名前を呼びかけたその刹那、あたしの動きは固まってしまった。
「陽介ぇ!」
彼の名前を呼ぶ高い声に視線を移せば、ショートヘアーの可愛らしい女の子が陽介の後に続いて階段を掛け下りてくる所だった。
……誰?
小柄で、ゆったりしたシフォン素材のタンクトップと、カーキ色のショートパンツからニョキッと出た小麦色の脚。
遠目から見ても可愛いとハッキリわかるその女の子は、階段を降りきって振り返る陽介の元に駆け寄って行った。
この距離じゃ、会話の内容までは聞き取れない。
おそらく同じ講義を受けていたらしいその女の子は、たくさんモノが入りそうな大きなバッグから、教科書らしきものを取り出して陽介に開いて見せていた。