嫉妬、そして……-3
一瞬、耳を疑った。
耳に入ってきた言葉が、あまりに自然過ぎて周りの喧騒のようだった。
目の前には自分が悪いわけじゃないのに申し訳なさそうにしている輝美の顔。肩を竦めているから、大きな胸がさらに強調されている。
そんな様子を見ていると、とても冗談を言ってるようには見えなかった。
「……ホントなの?」
「うん……、ま、まあ講義の内容について話していただけかもしれないし、臼井くんも邪険にできなくて話に付き合っていただけかもしれないけど……」
「…………」
絶句したまま固まっているあたしにようやく視線を移した輝美は、意を決したように小さく頷いてからあたしに言った。
「恵、臼井くんはカノジョがいてもやっぱりモテてるよ。あんたがしっかり繋いでおかないと、隙を見て狙う女はいっぱいいると思う」
頭が鈍器で殴られたような、そんな衝撃を受けた気分だった。
陽介はモテる。そんなの付き合う前からわかっていたことじゃないか。
いくらあたしが隣にいても、陽介に話しかけてくる女はたくさんいた。
陽介は適当にあしらっていたけど、花に群がる蜂のように女の子達は彼に近付いてくる。
振り払っても振り払っても、きりがない。
かと言って、あたしが常に隣にいたら、きっと陽介は疲れてしまう。
……あたしはどうすればいい?
確か今日のアルバイトは7時からって言ってたっけ。
タバコのヤニで黄ばんだ壁にかけられた時計に目をやると、5時限目――すなわち最後の講義が終わるところ。
陽介は、この校舎で講義を受けているはずだ。
ここで意地張って、会いたい気持ちを封じ込めていたら大切なものを失ってしまうかもしれない。
だったら5分くらいでいいから、会いに行こう!
あたしはガタンと勢いよく立ち上がると、
「輝美、あたし陽介に会いに行ってくる!」
とだけ言って、バッグを小脇に抱えバタバタと学食をあとにした。