Dancing With Mr.D-2
監督に促され、なつ子は郁子とともにハルの案内でステージ裏に。
壁の一部が鏡張りになってそこで並んでメイクできるようになっている楽屋は、衣装や化粧道具が乱雑に散らばっていた。
ここでダンサーに変身するウエイトレスらは人目も気にせず、陰毛も露わな全裸になって慌ただしく身体にアクセサリーをまと
い、お札を挟み込むための紐を思い思いの箇所に結びつけ、紐ビキニのパンツとパレオを腰にまとってメイクを始める。
なつ子もそれに習って短パンとTシャツを脱ぎ、全裸になってあぐらをかいて紐を結び始める。
無毛のなつ子の股間を見て、ダンサーが指をさして笑いながらなにか話しているが、全く理解できない。
ハルは首輪やネックレスなど自分の使っているアクセサリーでなつ子を飾り立てる。
細いチェーンに等間隔できらきらアクセサリーを連ね垂らしたものを「これがなつ子のパンツ」と、郁子が差し出しした。
「ええっ!? これ、アクセサリーちゃうん?」
なつ子は間違いじゃないかと聞き返すと、
「だって、パンツ履いてたら見えないでしょ? だからこれ。ね、わかる?」
郁子の説明を速攻理解した。
「そしてこれがなつ子のパレオ」
薄地でスケスケな淡いレインボーカラーに染められた、スカーフぐらいの大きさのパレオをひらひら掲げる。
「めっちゃスケスケやん、わかるけど、うん」
先ほどのアクセサリーを連ね垂らしたチェーンを、なつ子のお尻から下腹部あたりの周囲から落ちないように調節し、スケスケパレオを腰に巻いてみる。
鏡に映すと、チェーンから垂れ下がるアクセサリーはスカスカで割れ目やお尻を隠すためのものでないのは一目瞭然で、パレオもなつ子の出っ尻にまとわりついている程度。
「いいのよ、なつ子はみそっかすの子供ダンサー、陰毛もないしね、おまけだから」と郁子が説明する。
もちろん、なつ子は嫌がるはずもないことはわかりきっているからこそ。
鏡に向かったなつ子の顔に、ハルが器用にメイクを施す。
黒のアイラインと紫のシャドーをアクセントに、淡いピンクで頬を染め、ラメの入った口紅でエキゾチックに仕上げる。
自分で好きなの描けと言いたげに水性ペンの束をハルから渡されたなつ子は、時間も無いので右の頬にバカボンのような渦巻き、左の頬に二重丸のお日様を描いた。
「うふふ、無邪気っぽくっていいけど、ちょっと足りないんじゃない?」
郁子がそう評すると、ペンを手にお日様に一本の線を書き加えた。
「うひゃ、これ、オ・メ・コのマーク!」
なつ子が飛び上がる。
「これって、日本だけ? 万国共通なのかな? わかんないけどいいでしょ」
郁子は冷静に返した。
支配人が楽屋に顔を覗かせてなにやら叫ぶと、準備をしていたダンサーらは楽屋の両サイドに並び始めた。
「始まるわよ、私は客席で撮影に戻るから、頑張ってね」
郁子はあたふたと楽屋を飛び出しす。
ハルからハイビスカスの髪飾りをつけてもらい列の最後に並んだなつ子は、不安げに振り返ると手を振ってチュっと幸運の投げキッスをするハルと目が合って、少しの安堵を覚えた。