第十話〜制服〜-1
翌日、夏休み三日目。
朝目が覚めると、昨日と同じく隣に寝ていたはずの愛理がいなくなっていた。
「朝早いな…」
ケータイで時刻を確認すると、まだ七時を回ったところだった。
昨夜はセックスした後すぐに眠ってしまったので(最後に時刻を確認した時は二十二時ぐらいだったか)、今日もぐっすり眠ったことになる。
「おはよ」
居間に行くと、制服に身を包んだ愛理が母さんと朝食をとっていた。
「ああ、おはよう」
「私にはないの?」
と母さん。
「おはよ…」
ぼそっと呟くように言う。
高校生にもなると、親に「おはよう」とか「おやすみ」と挨拶するのが恥ずかしいんだよな。
「なんで制服着てるんだ?」
「あんたの趣味なんじゃないの?」
愛理に聞いたのだが、なぜか母さんに聞き返された。
「どうしてそうなった」
「愛理ちゃんに『学校行くの?』って聞いたら『あ、これは弘樹に頼まれたから着てるんです』って言ってたよ。ね?」
「はい。弘樹は変態なので」
親の前で変態とか言うな。
いやそんなことより、俺が好きなのはセーラー服であってうちの高校の制服じゃないってのに。
「弘樹、あんた愛理ちゃんを泣かせるんじゃないわよ?」
「泣かせないっての」
・・・・
「ま、昨夜の話は愛理ちゃんから聞いたして、あとは頑張ってとしか言えないわね」
愛理に目配せをする。何を話した。
愛理は照れたように笑って返す。
もしかして中出しされた、とか言ったのだろうか。だとしたら今晩は父さんから説教をくらうかもしれない…。
「ご馳走さま。それじゃ、仕事に行ってくるわね」
「いってらっしゃい、お母様」
食器を片付けて出かけていく母さん。
「で、結局どうして制服を着ているんだ?」
***
せっかくの夏休みだというのに、俺は愛理とともに我が高校へとやってきてしまった。
「先輩と学校デートをするため」
なんて愛理に言われたもんだから、つい誘いに乗ってしまったというわけだ。
来てから言うのもなんだが、たしかに昨夜俺は『愛理にセーラー服を着せ、先輩と呼ばせて先輩後輩デート』が一番いいみたいなことを言ったかもしれないが、わざわざ夏休みにそれを実行しなくてもいいんじゃないだろうか。