第八話〜幼馴染み〜-7
ちなみに会話の内容はこうだったらしい。
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一回目、小学一年生頃の五月十日。
場所は学校行事の遠足で行った大きな自然公園。
一人で弁当を食べている愛理に、俺は話しかけたのだと言う。
「一緒に食べよーぜ」
当時の俺は小一にしてギャルゲーマーだったので友達などいなく、愛理も人見知りでクラスに馴染めていなかったのだそうな。
「フラグ立つかな」
おい俺は本当にそんなこと言ったのか。
愛理から聞いた話なので、多少愛理の妄想が入っているかもしれない。
「なぁなぁ、大きくなったら結婚しようぜ」
「血痕?」
「こえーよ!」
いやいや、小一がするような話じゃないだろ!そもそも『血痕』なんて単語知ってるとは思えねーよ!
……回想にツッコミを入れても無駄か。
「そうだ!大人になって忘れてたら困るから、しょーこ作っとこうぜ」
そして先生に頼み、二人の写真を何枚か撮ったらしい。まったく憶えていないが。
それが最初の会話。
しかしその翌日から、薄情にも俺はそんな約束を忘れ、愛理に話しかけることすらなかったのだと言う。
我ながら酷い話だ。
***
二回目、小学三年生頃の七月二十三日。
場所は学校の教室。
「今日で佐藤さんとはお別れになります」
愛理は親の都合で転校することになったらしいのだが、クラスのみんなは誰も興味を示さなかったのだとか。
「や、山口くん…」
愛理はせめて最後に思い出を作りたくて、勇気を振り絞って俺に話しかけたらしい。
「ん?誰だっけ」
俺は愛理のことを忘れていた。
愛理の話では三年間同じクラスだったそうだが、そんな愛理のことを俺は忘れていた。
今も昔も。
「え…あの、佐藤、愛理…」
「ふーん。で?」
心が痛むほどに冷たい態度を取られた愛理。
「こ、れ…」
言いたいことは色々あったらしいのだが、最大の目的のみを達成したらしい。
「なにこれ?食えんの?」
「え、と…てんこー、しちゃうから…」
愛理は俺に、一通の手紙を渡した。
***
「すまん。やっぱよく憶えてない」
「いいよ…期待してなかったし」
酷い言われようだ。
それも仕方ないのかもしれないけど。