第八話〜幼馴染み〜-6
「転校してすぐ、私はあなたに会いにいったの」
「そうなのか」
「でも、他の女とイチャついていたわ」
「え?」
それこそ記憶にない。
俺は女の子どころか、男とすら友達になった記憶がないんだから。
というか小三でイチャつくって、具体的には何をしていたんだ。
「あ、今はその女とイチャついても大丈夫よ。私も寛容になったから」
「お前以外にイチャついた相手に心当たりがないんだが」
「何を言っているの。今でも視姦してはぁはぁしてるんでしょう?」
「愛理こそ何を言ってるんだ」
愛理を視姦してはぁはぁはできても、それ以外の女でとか…ないわー。
「今でもその女は、あなたの部屋の押し入れで寝泊まりしているわ」
「そんなドラえもんみたいなやつはいない」
そもそも俺の部屋の押し入れには人が入るスペースなんてない。
あるのは布団一式が二組と、フィギュアやら本棚に入りきらない漫画本やらのいわゆるオタクグッズ。それで埋まってしまっている。
「ん…?」
フィギュア…?
押し入れで寝泊まりしていて、俺とイチャついていた女の子…?
今はイチャついても大丈夫…?
「俺とイチャついてた女の子って、もしかして嫁のことか?」
嫁といっても三次元ではない。二次元のである。
「そうよ」
たしかに俺は小さい頃からゲーム、それも恋愛シミュレーションタイプのいわゆるギャルゲーが大好きな変わった子どもではあったし、フィギュアなんかも集めていてよく学校に持っていってはバカにされてはいたけど。
それにしたって『イチャついていた』っていう表現はおかしくないか。
まるで俺がフィギュアに話しかけていたみたいじゃないか。そんな昔のことは忘れたよ!
「ひとつ訊くが、俺たちって何をして遊んでいた?」
「何って、シーソーに乗るあなたを眺めてみたり、ブランコをこぐあなたを眺めてみたり、ジャングルジムに上るあなたを眺めてみたりする遊びよ」
「それ遊びじゃねーよ!」
眺めてただけじゃん!完全に愛理の視点じゃん!
よくそんなんで『幼馴染み』とか言えたなおい!
「二度もあなたと会話したじゃない」
「しかも二年間で二回しか会話してない!?」