第八話〜幼馴染み〜-4
「あら憶えてないの?愛理、どういうこと?」
「記憶の壁を越え、私たちは愛し合っている」
「素敵!さすが自慢の娘だわ!」
俺だけ蚊帳の外にいる気分だった。
おばさんの言い方だと、俺と愛理が昔の知り合い…幼馴染みみたいじゃないか。
「詳しくは愛理に聞いてちょうだい。はいこれ、つまらないものだけど」
『ギフトセット』と書かれた小さい箱を受け取った。
どれぐらい小さいかをあえて説明するなら、指輪が入っていそうな小ささである。
「お母さんに渡してね。それじゃあ愛理、頑張るのよ」
「うん」
去っていく愛理母。
興味本位で箱を開けてみて、俺は言葉を失った。
「お前の母親はどういう人なんだ」
「そういう人」
コンドームが3つ入っていた。
これを母さんに渡せと?おかしな誤解をされたらどうしてくれる。
「これは貰っておくとして」
コンドームをポケットに忍ばせる。いつか使う機会がくるはずだ。
「さっきのことだけど、どういうことなんだ?」
俺の問いに対し愛理はただ一言。
「幼馴染み」
とだけ言った。
幼馴染み…俺が考えたとおりではあるが。
「そんなエロゲーみたいな展開があってたまるか」
「でも事実」
愛理は言葉を続ける。
「鮮明に思い出せる。
小学校一年生の五月十日から、小学校三年生の七月二十三日まで、私たちは毎日のように遊んでいた」
詳しく憶えすぎで怖いわっ!
月はともかく、普通日付まで憶えてないだろ。小学生ならなおのこと。
しかしそれがたしかなら、俺たちは二年ちょいも仲良くしてたんだな。
「………」
思いだそうとしてみたけど、全然思い出せなかった。
「ま、まぁ幼馴染みってことはわかったよ」
やっぱり思い出せないけど。
「けど、なんでお前の母親…いや、俺の両親もそうだったな。俺たちの半同棲みたいな関係を認めてんだよ」
幼馴染みだからって、そう簡単に認めてもらえることではない。
高校生、年頃の男と女なのだ。
間違いが起こる可能性は十二分にありえることじゃないか。
事実その『間違い』のギリギリの行為をしてしまっているわけだし。
「わかりやすく言うならデスティニー」
「日本語で頼む」
デスティニーの意味は知ってるけどさ。