第六話〜接吻〜-4
***
「あら愛理ちゃん。いらっしゃい」
「お世話になりますお母様」
「この間は気付かなくてごめんなさいね」
「いえ。理科に全部持っていかれたみたいで」
「愛理…理科…おお、佐藤さんところの。いや〜大きくなって」
「お久しぶりですお父様」
夕方頃に家へとやってきたレンレンは、まるで一ノ瀬さんのごとくお嬢様口調で俺の両親と挨拶を交わした。
多々気になる部分があるんだけど。
「ところで弘樹」
父さんが何気なく聞いてくる。
「いつ式を挙げるんだ?」
「しき…?」
もしかして死の線が見えちゃったりするキャラクターのことだろうか。そんなわけないけど。
***
「なん…だと」
夕食を終えてレンレンとふたり、部屋でアニメを観ていたらいつの間にか日付が変わってしまっていた。
しかし俺が驚いたのはそんなことではなくて。
「本当ですか、レンレンさん」
「どうして敬語なの…まぁいいけど、本当」
「Oh...」
高校生の童貞男子にはキツイ現実が突きつけられた。
「このソファ、ベッドにもなるんだよね」
レンレンはソファの背もたれの部分を倒し、簡易ベッドへと変形させた。
それはちょうど、人ふたりがなんとか寝られるぐらいの広さで。
つまり、レンレンは俺と同じベッド、というかソファで寝ようというのだ。
「一応言っておく。敷き布団ならそこの押し入れに入ってるぞ」
「そっか。じゃあ一緒の布団で寝る?」
一緒のソファ。
一緒の布団。
うん。後者のほうが色々とマズイ。
ソファならまだなんとか、少なくとも布団よりはモヤモヤムラムラしなくて済みそうだ。
そう思ってソファで寝ることを提案した。
「そろそろパジャマに着替えよっかな」
「そっか」
「………」
「……?」
「弘樹の前では着替えられない」
あ、気がつかなかった。
いつも裸を見せてくるから(写真で)、俺がいても普通に着替えるのだろうなんて思っていたけど。
そうだった。レンレンは大胆に見えてウブなんだよな。
「わり。じゃあ目つむるな」
「……いや、そうではなくて」
「どうした?着替えていいんだぞ」
「部屋の外で待ってろー!」
レンレンに追い出されてしまった。
俺の部屋なんだけどな。
「…あれ?」
はたと気付く。
俺も着替えるべきなのか…?