第三話〜疑惑〜-3
周囲を確認してみると、机のすくそばに消しゴムが落ちていた。もちろん俺のではない。
周りの席のやつに確認してみたが、持ち主は存在しなかった。
「誰のだ?」
あるいは頭にぶつかった、というか投擲されたのがこの消しゴムなのか。
もしかしたら後ろの席のレンレンなら、どこから消しゴムが飛んできたのか知っているかもしれない。
「なぁ」
そう思って振り返ってみると、レンレンはケータイを弄っていた。
俺に声をかけられ、ばっとケータイを隠す。
「なんで隠すんだ?」
「なんでもないわ」
それにしても昼休みに見たときとケータイの色が違った気がする。二台持ってるのか?
などと考えていると、胸ポケットが震えた。ケータイのバイブである。
一ノ瀬可憐。
早くも一ノ瀬さんからの返信であった。
『この前見せたじゃないですか。あれで我慢してください』
なんだつまらない。おっぱい添付されてないじゃん。
返信しようとしたところで先生がきてしまったので、俺は即座にケータイを閉まった。
***
「弘樹、お客さん。女の子ようふふ」
部屋で漫画を読んでいると、母さんが俺を呼んだ。
俺に客?しかも女の子とは。思い当たる人物は一人しかいない。
「どした」
予想したとおり、玄関で俺を待っていたのは私服姿のレンレンだった。
紺のホットパンツに黒のタンクトップ。考えてみれば今まで学校指定の制服姿しか見たことなかったから、とても新鮮だぞ。
「可愛いかっこしてるな」
「えっ」
頬を赤らめるレンレン。こいつ褒められるのに弱いよな。
「Vゾーンが素敵」
「一瞬前の私の恥じらいを返して」
***
遊びにきたらしいレンレンを部屋に招き、俺はある物を差し出した。
「なにこの薄い本は」
「俺がロリコンじゃないってことを証明してくれる本だ」
ただのエロ同人誌ですけどね。
レンレンは表紙に描かれている可愛い女の子のキャラクター(ちなみに名前はリィンという)を見つめたまま動かない。
「成人向けって書いてあるわよ」
「気にするな」
「そんなわけにはいかないわ」
もしかして同人誌とか苦手だったのか?二次創作反対派っているからな。
「私はカーリィより、リィカーが…ではなくて」
単に受け攻めが気にいらなかっただけかい。しかも表紙だけで判断するとはやるな。